つながった
2011年Jリーグディビジョン2第37節
湘南ベルマーレ 0-2 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/古田、宮澤
湘南/いない
前節ザスパ草津に痛恨の逆転負けを喫し、文字通りにがけっぷちに立たされた札幌。この湘南ベルマーレ戦に負けるようなことがあれば、最終戦を前に昇格の可能性がほぼ潰えます。がけっぷちぶりでいえば海南大付属に負けた湘北高校くらいか、もしくは「沼」でパッキーカードが切れた時のカイジくらいかもしれませんが、とにかく前回書いたように「最終戦で全てが決まる」というようなシビれるような状況にするためには、この試合に勝つことが大前提。そんなチームを後押しするべく、平塚競技場には約1,800人もの札幌サポーターが駆けつけました。赤黒で埋め尽くされた平塚競技場のバックスタンドを見ると、11年前にここ平塚競技場で昇格を決めた時の試合が思い出されます。あの日あのピッチにはエメルソンがいて、バンバンがいて、ミールさんがいて、優津樹がいて、田渕がいて、野々村がいて、名塚さんがいて、洋平がいて、健作がいて、古川先生がいて、ビジュが踊ってましたね。彼らはもうチームにはいませんけど、スタンドには11年前にもそこにいたというサポーターは多かったに違いありません。赤と黒のユニフォームは変わらずそこにあり続けているということですね。
対する湘南ベルマーレは前節までの時点で13位。アルビレックス新潟、湘南ベルマーレと2つのチームを昇格させた反町監督といえどやはり主力流出の影響は大きかったのでしょうか。既に昇格の可能性はないとはいえ、この試合がホーム最終戦となり、既に退団が決まっている反町監督やMFアジエルにとっては、ホームのサポーターの前でのラストゲーム。無様な試合は見せられないでしょう。単純に順位の差がそのまま試合の結果に繋がるわけではないことは充分わかっていることです。思えば湘南とは同じリーグにいることが多かったため対戦数も多く、ボコったりボコられたり仲良くやってきた通算成績は11勝10敗9分とほぼ五分。前回のホームゲームでも0-1で敗れていますし、決して簡単な試合にはならないはず。そして試合はその通り、湘南のペースで進みました。
開始早々に湘南にぽんぽんとボールを繋がれてミドルシュートを放たれると、その後もアジエルを中心にチャンスを作りだされてしまいます。大きな怪我をしたとはいえ、そのボールさばきはさすがであり、札幌としてはまずはアジエルにボールを持たせないことがまず重要なのですが、湘南の選手の距離感がよく、ボールがよく回るため札幌はプレスのポイントを絞れません。プレスに行けばフリーの選手にパスが出て、そちらにプレスに行けばいつの間にかポジションを変えているアジエルにボールが渡り、アジエルを抑えようとすればまた別の選手が絡む流れで、札幌はいつの間にかボランチも最終ラインに吸収された状態でずるずると下がり、アタッキングエリアにぽっかりとスペースが空いているのがわかります。中継を見てて「翻弄されている」という表現が一番ぴったりするような状況。札幌ドームで負けた時もこんな感じの展開だった気がします。それでも最終ラインの奮闘で最後の砦は死守しますが、ボールを止められるのがそこだとクリアが精一杯となってしまいますから、なかなかトップにいいボールは入りませんよね。アジエルに優るとも劣らない愛嬌を持つ顔のジオゴさんが調子を落としているのもありますが、万全だったとしても徹底マークを受ける中でどんなボールも収めてくれと言うのはさすがに酷な話。
それにしても、湘南もこのサッカーがいつもできていればこの順位にはいないだろうに、とは思うんですけど、どんなにパスを繋げても得点が取れなければそれは「いいサッカー」ではないのですよね。決定力のあるFWがいれば、もし田原豊がこの試合出場停止でなければもしかしたら結果は変わっていたかもしれませんが。結果として、「決めるべきところで決められなければ逆にやられる」というサッカー界にそこはかとなく囁かれるジンクス通りになってしまったという感じでしょうか。
やられっぱなしで後手後手に回っていた前半をそれでも無失点で折り返すと、ノブリンは後半からボランチだった河合を下げて3バックに変更。マークをはっきりさせて、まずはアジエルを抑え込む作戦に出ました。しかし3バックにするということはサイドのスペースを空けるということであり、果たして後半開始からしばらくはサイドを起点にされクロスを放り込まれるようになります。いくつかはMajiでやられる5秒前なんて感じの超やばいシーンもあったんですけど、相手のミスにも助けられ事なきを得ます。
そして後半12分、ノブリンはジオゴさんに変えて近藤祐介を入れてきました。前節は自身のファウルが失点のきっかけとなってしまったのですが、名誉挽回といわんばかりに、独特の「ヒジから下だけを振るフォーム」で走り回ります。するとその4分後の16分、右サイドをうっちーから砂さんに繋いだボールが近藤に入り、受けた近藤がシュートを打つと見せかけて左に流すと、フリーで走り込んできた古田が利き足とは逆の右足で豪快に叩き込んで札幌が先制しました。
昇格に向けて大きな大きな先制点を挙げた札幌。前節は得失点差を意識するあまり、チームとしての全体的な意思統一ができないまま焦って攻撃にいって自滅した格好で、まるで彼女がいるのに合コンに行って、無駄にがっついてドン引きされるような感じでしたが、この試合は「まずは勝点3を確実にゲット」ということで一致したのか、その後いくつかのチャンスを相手に阻まれても焦りの色は見られません。相手が巻(弟)とルーカス(偽)を投入してきたことで守る側も狙いがはっきりし、シュートこそ打たれるもののほとんどのシュートがホスンの正面、つまり「打たせた」シュートで(たぶん)、さほど危ないシーンも見られず。
後半34分、ノブリンは砂さんを下げて怪我で長く戦列を離れていました芳賀を投入。攻撃の選手を下げて守備の選手を入れることは、間違いなく守りきるぞというメッセージですが、形はともかくしっかりやるべきことをやっていればチャンスも転がり込んでくるもので、その交代から4分後の後半38分、左サイドをいつものイノシシ的なドリブルで突破した近藤が、打つ気マンマンと見せかけて逆サイドにちょこざいなパス。そこで待ち構えていたのが、芳賀さんが入って後顧を憂う必要のなくなった宮澤でした。見事などフリーで外すほうが難しそうな状況で、それでもクロスバーに当てる芸当を店ながらも落ち着いて決めダメ押し点をゲット。このまま逃げ切った札幌が2-0で勝利しました。
そして、この翌日に行われた徳島ヴォルティス対サガン鳥栖の1戦は、鳥栖が0-3で徳島をオッスオッスと一蹴。勝点が並んだだけでなく得失点差で札幌が徳島を上回り、3位に浮上しました。最高の状況で最終戦を迎えることになります。