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ロマン主義の話

お久しぶりでございます。

この記事は、北海道コンサドーレ札幌Advent Calendarのために書き下ろしたものです。最近はこれがなければ更新しなくなってしまいましたが、更新するつもりはあるんですよ。つもりは。

さて、これまではずっと「レジェンド伝説」をやってきたんですけど、一通りやり尽くした感があるため、今回はちょっと趣向を変えてみます。

まだ新型コロナウィルスが今ほど騒がれていなかった2月初頭、一人のブラジル人ストライカーの獲得発表がありました。当時はすでに5人の外国籍(扱いとなる)選手がいる中で、いきなりやってきたその選手の名前は、ドウグラス・フェリスビーノ・デ・オリヴェイラ。

兵役の関係で今季一杯と言われるクソンユンの退団後を見据えてなのか、あるいは怪我がちなジェイボスロイドの穴埋めなのか、それともアンデルソンロペスに中東あたりからオファーが来てて、その補充なのではないかなど、さまざまな憶測が飛び交いましたが、その時点ではっきりしていたのは、その経歴に並ぶ、聞いたこともないようなチーム名の数々と、FWにしてはあまりにも控えめなゴール数。

通常なら、「なんでこんな選手獲ってきたんだ?」と思うところでしょう。しかし、彼の経歴を見て、古くからのサポーターたちは色めき立ちました。「ロマンだ! ロマンがやってきた!」と。

彼らはクソ弱かった時代から離れることなく応援し続けてきた人たちであり、良く言えば肝の据わった、悪く言えばどっかネジの飛んだ人が多いので、若い人たちには是非生温かく放置をしてもらいたいところですが、そういう風になっ(てしまっ)た経緯は一応それなりにないこともないので、本日はロマンについての話をしましょう。

ロマンとは何か?

札幌における「ロマン」の条件とは、おおむね以下のような感じです。

  1. 国籍
    国籍は特に問いませんが。ブラジル人であればポイントアップとなります。なぜブラジル人なのかは後述します。
  2. 経歴
    コンサドーレに至るまでのチームは、無名であればあるほどロマン的によいとされています。「埋もれた逸材感」が上がるからです。そして、たまに誰もが知るような名門なチームが入ってると、「実は期待されていた選手なのでは?」とさらにロマン度が高まります。
  3. 能力
    重要視するのは身体能力です。背が高い、脚が速い、ジャンプ力がすごいなど。足もとの技術はあるに越したことはないですが、「身体能力が高くてボール扱いもうまい」選手だったら、とっくにいいチームに引き抜かれて活躍しているはずなので、あまり重要視はしません。
  4. その他
    面白い、めんこい、クセが強いなど、キャラクター面も大事な要素です。愛され度もロマンなのです。

以上の条件は、必ずしも全部を満たしていなければいけないものではなく、「満たせば満たすほどよい」というものです。日本人としては、FW上原慎也(2009~2017年在籍)が名誉ロマン枠として語られることもありました。

なぜ、ロマンなのか?

さて、そもそもこのロマンという概念が生まれた背景として、コンサドーレは度重なるJ2降格やあれやこれで、とにかくお金がない時代が長かったことがあります。どのくらいお金がなかったかというと、ベンチ入り人数が7人までにルールが変わっても、遠征費がもったいないから5人しかアウェイに連れて行かない、なんてことが普通の時代でした。

当然、貧乏は選手補強にも影響します。お金を出してくれる親会社もいないコンサドーレに、FCバルセロナのスーパースターはもちろん、ブラジルの強豪チームの選手を連れてくるなんてこともできません。札幌が取れるようなお値段の選手は、聞いたこともないようなチームの、無名の選手くらい。

それでも、1万人を超えるプロサッカー選手がいると言われるサッカー王国ブラジルになら、まだ見ぬ金の卵が埋もれているかもしれない、いや、埋もれていて欲しいし、この連れてきた選手がそうであって欲しい…これが「ブラジル人であればロマン度アップ」の理由です。ブラジルには夢がある。

とはいえ、そんな選手が簡単に見つかるなら誰だって苦労はしないわけで、そうして札幌までやってきたものの、まったく試合に絡むことなくひみつへいきのまま終わった選手とか、しまふく寮のちゃんこ番で終わった選手とか、二日酔いで練習参加という、真面目なのか不真面目なのかよくわからない理由で解雇された選手なども、たくさんいました。

一方で、そんな中から活躍した選手が実際に何人かいたこと、中には大活躍して高額で売れて、大きな遺産まで残していった選手もおり、そういった選手をいつしか「ロマン」と呼ぶようになっていったのです。

しかしながら、近年はチームの予算も数年前と比べて飛躍的に増え、活躍確度の高い外国籍選手を獲得することができるようになっています。すでに日本での実績があったジェイボスロイドやアンデルソンロペスしかり、日本での実績はないながらも、ブラジルの全国選手権1部のヴィトーリアでプレイし、バリバリ試合に出ていたルーカスフェルナンデスしかり。

「札幌もそんなまっとうな補強が出来るようになったんだ…これでもう『寮で出すごはんのおかずを一品減らせ』などと言われることもなくなるんだ…」と喜ぶ反面、もうロマンを追い求める必要はなくなったんだね…などと、なんとなく寂しさも感じていた老害…いや古くからのサポーターの目の前に、突然現れたのがドウグラス・オリヴェイラだったのです。

札幌の強化部が決してロマンを忘れていたわけではなかったこと、そしてドウグラス選手自身も、ロマンの条件をほぼ完璧満たす謎経歴、基本あんまりうまくないけど時折見せる可能性を感じさせるプレイは、まさにロマンの申し子と言えるロマンっぷりだったわけで、我々が興奮を隠せないのも理解していただけるかと思います。

ちなみに、2000年初頭には「有能だけど訳ありな助っ人を安く獲得」という形のロマンも存在しました。いわゆる「大島てる補強」と呼ばれるものですが(呼ばれてません)、「年齢詐称がバレそうになって日本に高跳びしてきた(と、後に判明した)人」や、「気性が難し過ぎて前所属チームで持てあまされていた人」あたりがその成功例と言えるでしょう。

ただし、この作戦の盲点としては、そもそもの実力がコンサドーレには分不相応なほどに高いので、その能力を発揮できた場合は当然活躍してしまい、すぐに他チームに引き抜かれてしまうこと、加えて、そんな都合のいい物件はそうそう見つからない稀少種(気性だけに)などの理由で、さほど例は多くありません。この時期を「前期ロマン派時代」と呼びます(呼びません)。

かつてロマンだった人たち

ロマンについて学んだところで、過去の代表的なロマン枠の選手をご紹介しましょう。すでにこれまでのレジェンド伝説で取り上げた選手がほとんどですが、今回は別の切り口での紹介です。チームの経歴は札幌までのものですが、調べるサイトによって経歴が違う、なんてことが普通にあるので、何が本当なのかは正直全然わかりません。また、チームの所属ディビジョンは基本的に本人が所属していた当時のものです。

※日本だと地域リーグの上に全国リーグがある構造ですが、ブラジルでは全国リーグと州リーグは別の大会なので、両方のリーグに参加することができます。チーム名の後に2つの表記があるのはそのためです(州リーグのみで全国リーグには参加しないというチームもあります)。また、日本の地域リーグもそうですが、基本的に都会のほうがレベルが高い傾向にあるので、州リーグ間のレベル差は大きいようです。つまり、田舎のチームであればあるほどロマン度は高くなります。

ビジュ
所属期間 1999年途中~2002年
国籍 ブラジル
経歴 ゴイタカスFC(リオ州2部)~アメリカーノ(リオ州1部)~ウニオンサンジョアンEC(サンパウロ州1部・全国2部)
能力 上背とスピードはそれほどでもなかったものの、とにかく身体能力(特にジャンプ力)が高く、運動量にも長けていた。足もとの技術は微妙だった
その他 全治3週間の怪我を1週間で治してくるなど、本当に地球人なのか疑わしいエピソードあり。野性味溢れるプレイと、勝利後の変な踊りで人気を博した
総評 振り返れば、ロマン枠の祖と言える存在。他チームに引き抜かれない程度(浦和からオファーという話はあった)の絶妙な活躍で、なんだかんだで3シーズン半の在籍。これはブラジル人選手としては現在でもコンサドーレ最長記録です(2020年時点)
フッキ
所属期間 2006年
国籍 ブラジル
経歴 ヴィトーリア(バイーア州1部、全国1部)~川崎フロンターレ
能力 圧倒的なパワーと瞬発力でピッチに君臨したものの、札幌にいた当時は「インサイドキックがド下手」という、荒削りにもほどがある素材だった
その他 ゴールは取るがカードももらう、典型的な気性難で、25ゴール18警告3退場という圧巻の成績を残した
総評 川崎フロンターレが将来性を見込んで獲得したものの、気性難と外国籍枠の関係もあって持てあまされ、札幌にレンタルという図式なので、分類としては前期ロマン派となりますね。やはり活躍しすぎてしまったため札幌にいたのは1年間だけで、レンタルだったため直接の移籍金は入りませんでしたが、後にブラジル代表にまで上り詰め、高額で移籍するたびに札幌に育成連帯金をもたらしてくれるありがたいお方です
ダヴィ
所属期間 2007年~2008年
国籍 ブラジル
経歴 マラングアペFC(セアラー州2部)、イパチンガFC(ミナスジェライス州1部)~ヴィトーリア(バイーア州1部、全国2部)~CSA(アラゴアス州1部、全国3部)
能力 大柄な体躯から繰り出されるパワーは抜群。足もとの技術は微妙だったものの、スピードを生かして一直線に抜くおおざっぱなドリブルが武器だった
その他 加入当初のキャンプでは、インターバル走は最下位、リフティングもルーキーの西大伍に圧倒的に負けるくらいだったのに、試合になるとゴールを量産。その強烈なシュートは、愛称の「カバーロ(馬)」にちなんで、「ひづめシュート」と呼ばれた
総評 デビューしたチームがもう聞いたこともなくて最高。所属していた当時は2部降格していたとはいえ、名門ヴィトーリアがあるのもポイント高いですね。わずか500万円という格安の年俸で獲得した選手が、2年後に3億円で売れたのですから、まさに至高のロマン領域に達したと言えるでしょう
ジオゴ
所属期間 2011年途中~末まで
国籍 ブラジル
経歴 ジャバクアラ(サンパウロ州6部)~アメリカFC(リオグランデ・ド・ノルテ州1部)~リオブランコFC(サンパウロ州1部、全国3部)~フラメンゴ(リオ州1部、全国1部)~カルマルFC(スウェーデン1部)~ヴィトーリア・セツバル(ポルトガル3部)~ジュベントゥージ(リオグランデ・ド・スル州1部、全国1部)~アル・ジャジーラ(UAE1部)~ノルチェピング(スウェーデン2部)~ガロマリンガ(パラナ州1部、全国3部)~ボアビスタ(リオ州1部、全国3部)~ブラジリエンセ(連邦区1部、全国2部)~ABC(リオグランデ・ド・ノルテ州1部、全国2部)~ブルスケ(サンタカタリナ州1部、全国4部)~サンベルナルド(サンパウロ州2部)~アメリカTO(ミナスジェライス州1部)~アラポンガスEC(パラナ州1部)
能力 185cmという長身の割にヘディングは得意ではなく、強さも技術もさほどでもなかったが、ポストプレーだけは妙に上手かった
その他 ゴール後の謎のカラスパフォーマンスが話題になりました。今見るとちょっとウィーラー(楽天→巨人)に似てる
総評 まず目につくのが所属チームの多さ。あちこちのサイトの情報を総合すると、名門サントスの下部組織で育ちながら、デビューはサンパウロ州リーグの6部チームだったらしく、そこからだいたい半年に1回のペースで移籍、コンサドーレに来るまでに実に17ものチームでプレイした渡りガラス。ほとんどが聞いたこともない名前のチームですが、名門フラメンゴで19試合5ゴールを挙げ、欧州移籍も果たしているのですから、それなりに期待されてたのかもしれません。ロマン度としてはまずまず
フェホ
所属期間 2013年途中~末まで
国籍 ブラジル
経歴 クリシューマEC(サンタカタリナ州1部、全国1部)~アトレチコ・パラナエンセ(パラナ州1部、全国1部)~ナザレノス(ポルトガル3部)~FCアララト・エレバン(アルメニア1部)~トレエンセ(ポルトガル2部)~オディヴェーラス(ポルトガル2部)~パンピリョーザ(ポルトガル2部)~スパルタク・ナリチク(ロシア1部)~FKバクー(アゼルバイジャン1部)~リオブランコEC(サンパウロ州1部)~レイションイス(ポルトガル2部)~フェレンツヴァーロシュTC(ハンガリー1部)~カウデンセ(ミナスジェライス州1部)~ボタフォゴ(サンパウロ州1部、全国1部)~ノヴォ・アンブルゴ(リオグランデ・ド・スル州1部)~グレミオ・ノヴォリゾンチーノ(サンパウロ州3部)
能力 197cmという、おそらくコンサドーレのフィールドプレイヤーで史上最高身長の選手。その割には脚も速く、相手DFの後ろからスタートして先にルーズボールに追いつく様は、まさに進撃の巨人。足もとの技術は微妙だった。
その他 ゴール後にサポーター席に雪崩れ込んだと思ったら、ウルトラスのスネアを奪い取って叩くという意味不明なパフォーマンスをした
総評 こちらも所属チームの多さが目を引きます。期限付でのレンタル移籍を繰り返していたようですが、アルメニアやアゼルバイジャン、ハンガリーなど、旧東欧諸国でのプレイが多い不思議な経歴の持ち主。最も強化費が少なかったと言われる2013年にやってきた選手なので、お値段はお察しかと思われますが、レ・コン・ビンとのコンビでけっこう活躍。クラブとしても契約を延長するつもりだったようですが、彼の乗った飛行機はなぜか日本を通過し、中国へ行ってしまいました。あとレ・コン・ビンは帰ってこなかった。
パウロン
所属期間 2013年~2015年
国籍 ブラジル
経歴 エンジェニェイロ・ベウトラン(パラナ州1部)~PSTC(パラナ州3部)~ローマアプカラナ(パラナ州1部)~FCカスカベウ(パラナ州2部)~PSTC(パラナ州3部)
能力 高さと速さとパワー、三拍子兼ね備えた身体能力を誇りながら、足もとの技術は微妙という、まさにロマンの塊だった
その他 シュートの際に勢い余って豪快なトリプルアクセルを決めた以外、あんまり記憶にない
総評 フェホ同様、最も強化費が少なかったと言われる2013年にやってきた選手なので、やはりお値段はお察しかと思われますが、試合に出たときはびっくりするようなプレイを見せる一方、とにかく怪我が多く、野々村社長をして「1日出たら5日休む」と言わしめました。ただ、本能で動くタイプなのか別の意味でびっくりするようなプレイを見せることも多く、監督としては使いにくそうでした。
ヘイス
所属期間 2016年~2018年
国籍 ブラジル
経歴 PSV(オランダ1部)~トゥピFC(ミナスジェライス州1部、全国4部)~PSV(オランダ1部)~フィテッセ(オランダ1部)~トンベンセ(ミナスジェライス州1部、全国4部)~カンポリーナ(アマチュア?)~サンタクルスFC(ペルナンブーコ州1部)~ボルスポル(トルコ2部)~バイーア(バイーア州1部、全国2部)
能力 技術は圧倒的に高かったが、怪我も多く、トップコンディションを見せることは少なかった
その他 体重オーバーでキャンプインした理由が、「お母さんの料理が旨すぎてつい食べ過ぎてしまった」というもので、サポーターは「じゃあ仕方ないな」と総じて納得
総評 若くしてオランダに渡り、将来を嘱望されていたものの、薬物や生活態度の問題、膝の大けがなどで大成できず、訳あり助っ人(前期ロマン派)に分類される。一時期はアマチュアクラブでプレイするまでに身を落としていたこともあり、心情的にも復活して欲しいし、もしそれができたらJでも屈指の選手になるはず…と、活躍を祈るサポーターも多かった。苦しいときに貴重なゴールを決めるなど、相応の活躍をしたものの、全盛期の輝きは取り戻せなかった

おわりに

そんなわけで長々と語ってきましたが、「ロマン」の経緯と実例について、だいたいご理解いただけたのではないかと思います。もっとも、ここまで書いておいて何ですが、別に理解しなくても何の問題もありません。

また、ここに挙げられてない中でも「ロマンなのでは?」と思う選手はいるかもしれませんが、ロマンの定義はあくまでオレの自分勝手な解釈なので、あなたがロマンだと思う選手を大切にしてください。キミもキミだけのロマンを探そう!

この他にも、選手自身ではなく、「福森のボランチ」や「宮澤のサイド起用」など、「もしかしたらイケるんじゃね?」と起用されたものの、まるでイケなかった事例を「ロマン」と呼ぶことがあります。そういう意味では、「マエシュンをあきらめない」という言葉もロマンだと言えるかも知れませんね。

ドドちゃんは期限付移籍なので、来季どうなるかはわかりませんが、個人的には是非とも札幌に残ってロマンを体現して欲しい人材ではありますね。