やっぱり勝てない
2009年Jリーグディビジョン2第24節
ベガルタ仙台 1-1 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/上里
仙台/中原
開始時点での気温が32.9度という猛暑の中で行われたこの試合、札幌の選手にとっては相当きついようで、開始早々にカウンターから梁勇基に突破され、いきなりどフリーで平瀬にシュートを許す不安な立ち上がり。暑いと体力的にももちろんきついんですが、それ以上に落ちるのが判断力です。札幌の日本人選手の中では一番暑い地域の生まれである上里さんが、走り込む平瀬を確認しつつ併走してたと思ったらなぜかその平瀬をほっぽって離れていったのを見るにつけ、やっぱりこの試合も失点は覚悟しなければいけなさそうです。
ただこれだけ暑いと仙台の選手にとってもやっぱりきついことはきついようで、やや仙台ペースでありながらも仙台にも細かいミスが目立ちます。しかしそれでもお互いに先制点をやらずにこっちが先に点を取る、という意識でガチンコのぶつかり合いを展開。仙台は梁を中心に、そして札幌は当然クライトンを中心になんとか隙を見てこじ開けてやろうといった戦いが繰り広げられます。何本か惜しいシュートを放った仙台に比べると、紀梨乃がエリゼウにほぼ抑えこまれてあまりいい形には持って行けていなかった札幌も、前半終了間際には怒濤の攻撃で惜しいチャンスを作り出しますが、仙台の体を張ったディフェンスに阻まれ得点ならず、前半は0-0で終了。というかせめて征也のヘッドは決めて欲しかったシュートでしたが。もともとシュートのうまい選手ですし、ヘディングだってそう下手な選手ではないはずなんですけど、「未だにレギュラー攻撃陣で唯一ゴールを決めていない」というのが微妙なプレッシャーになっちゃってるんですかね。もしくは、呪いですね。きっとシーズン前くらいに、北海道では「サッカーの聖地」と呼ばれる藤野聖山園にうっかりゴミを落としてきてしまったりしたのかもしれません。
しかし先制点は意外な形で札幌にもたらされました。後半6分、左サイドでボールを受けた上里が放ったクロスがうまいことクロスに備えたポジショニングをしていた林の逆を突くシュートとなりゴールイン。本人も「狙ってませんでした」と正直すぎるコメントを残したラッキーなゴールでリードを奪います。
先制された仙台はすぐさま反撃に出ます。札幌としては追加点を奪い、もはや定番となりつつある「残り30分」をできるだけ精神的に楽に過ごしたいところですが、猛攻を仕掛ける仙台に対してカウンターを仕掛けることもままならない状態が続きます。GK荒谷の好セーブもありなんとか得点を許しませんでしたが、失点率の高い「残り30分」の中でもさらにボーナスチャンスとなっている「残り10分」の段階になって、関口からのクロスを中原に頭で決められついに失点。その後も恒例となった「失点しちゃったのですっごい頑張ってみましたけど決められませんでした」パターンで試合終了となりました。
さて、内容としては割と面白かった試合だと思うんですが、それでも引き分けという結果についてはやっぱり面白いとは言えないわけで、正直「また引き分けか」といった感じ。負けないだけよかった、という考え方もできなくはないですし、実際第7節カターレ富山戦以降、18試合で2試合しか負けていないんですが、この試合で引き分け数2桁リーグ一番乗りを達成したようにいかんせん引き分けの多いのがネック。いくらい黒星が少ないといっても勝点的には3引き分けは1勝2敗と同じですから、極端な話10引き分けというのは3勝6敗1分と一緒。もちろん内容的に引き分けでも上等というような試合もありますが、札幌の場合どっちかと言えば「勝てる試合を落とした」という印象の試合が多いですし、ここまで24試合を終えましたが、1回り半してみて「ここにはどうやっても勝てそうもない」というようチームもなかっただけに、非常にもったいないですね。一昔前なら宮の沢にもったいないおばけが所狭しと集結しているに違いありません。あともう一皮だとは思うんですけど、その一皮がなかなか剥けない、というかむしろ治りかけの傷に張ったカサブタをついムラムラしてはがしてしまってまた治りが遅くなる、というような感じかも知れません。いずれにしてもこの引き分け地獄から抜け出すためには、攻撃力を強化してより多くのゴールを奪うようにするか、守備力を強化してより少ない失点を目指すか、もちろん両方強化というのが一番理想的なのですが、どのみち戦術的な部分である程度カバーできるにしても、最後の部分、たとえばシュートをゴールに入れるとか、相手を止めたりとかは個人個人のスキルにも関わってくることだと思います。戦術だけじゃJ1に行った時に通用しないことは去年身を以て知っただけに、個人能力のアップが不可欠だと思います。とはいえ、今から代表クラスのテクニックを身につけろなんてどだい無茶な話ですので、ここはもっとも役に立ちそうな能力をピンポイントに鍛え上げるべきではないかと思います。具体的には、ストライカーなら「相手から消える能力」です。試合を見ながらついつい選手に「へったくそ~」とか叫んでしまっても、実際マッチアップしてみたらどうやっても止められないのは、マークをするこっちが素人のプレッシャーしかかけられないからです。ならば、たとえプロが相手でもプレッシャーのない状態を作り出せば、ミスをする確率は格段に減るわけです。つまり、いかにフリーでシュートを打つか、そのためにいかに相手から消えるか、ということです。実際、過去のJ1得点ランキングを見ても、日本人で得点王やそれに準ずる成績を挙げた選手は、テクニックよりもそういった「ボールのないところの動き」のうまさが目立っていました。まぁ長々と書いて何が言いたかったのかというと、メガネを替えたのに誰からも指摘されなかった第5世代クラスのステルス性を持つ私が貴方を矯正してあげてもいい。問題は、同時に味方からも消えてしまうことなんですが。