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2011年10月 アーカイブ

2011年10月 4日

国立(大)初勝利

2011年Jリーグディビジョン2第30節
横浜FC 1-2 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/内村、上原
     横浜FC/野崎

 前節徳島ヴォルティスと引き分け首位からは滑り落ちたものの、連戦を2勝1分けでしのぎ2位をキープしている札幌は、横浜FCとのアウェイ戦を迎えます。2位とはいえ3位の徳島とは勝点差わずかに1、同じ勝点で並ぶ4位サガン鳥栖、5位ジェフユナイテッド市原とも3しかなく、少しつまづいただけでもあっという今に昇格圏外に転がり出てしまいますし、徳島とも鳥栖ともまだ直接対決が残っている状況だけに、前節(第5節)終了時点で8勝12敗7分の勝点31、20チーム中15位横浜FCが相手となれば、ここは確実に勝っておかなければいけない試合です。
 しかし、どうにも横浜FCには相性が良くないのが札幌。何度も書いているとおり今季の札幌が今の順位にいられている最大の要因はその失点の少なさによるところが大きく、全チームと1通り対戦したここまでの試合で3点以上取られたことは1度もなく、また2失点を喫した相手も4チームしかないのですが、その4チームのうち1チームがこの横浜FCです。やれ札幌の連勝は何日ぶりだとか、3連勝となると何年ぶりだとか、そんな今から考えればすごい話をしていたもんだと思いますが、調子が上がらない中でそれでもファジアーノ岡山、大分トリニータと連勝を重ねて臨んだ室蘭で0-2とあっさり負けた試合ですね。今までの通算対戦成績も5勝10敗7分と大きく負け越しています。加えて、試合会場である国立霞ヶ丘競技場では、コンサドーレ(のトップチーム)は未だ勝利がありません。
 その相性の悪さはよっぽどなのか、この試合も立ち上がりから圧倒的な横浜FCのペースですすみます。札幌は前節から多少試合間隔が空いたことで、徳島戦でベンチスタートだった主力選手も頭から使える状態になり、体調不良で欠場した岩沼も復帰と、宮澤や芳賀がいない中での現状ベストと言えるメンバーで臨むことができたのですが、そんなことは些細な問題とばかりに攻められまくる一方。なんでか知りませんけど横浜FCってその時の順位が何位であろうとなぜか札幌戦だけは別チームのようなパフォーマンスを見せるのは気のせいなんでしょうか。室蘭でもJ1でもあまり見られないようなすげえミドルシュートをカイオに決められましたし。このサッカーがいつもできてたらあんな順位にはいないと思うんですけどね。
 そんなわけで札幌は前半30分近くまでただの1本もシュートを打てない有様。まぁそれ自体はいつものことといえばいつものことなんで今更どうもこうもないにしても、守備面ではほんとよく失点しなかったなというのが正直なところ。選手と選手の間に入り込まれて、そこにボールが出て慌ててプレスに行くものの、今度はその選手が空けたスペースに入られ…というような、「いかにもダメな守備の典型」で、確かに岩沼はボランチだと割とポジショニングにルーズなところがあるし、そのためか河合も割とボールサイドに寄ってしまいがちな傾向があるので、実のところ今の札幌のウィークポイントではあるのですけど、そんなわけで打たれたシュートは5本とそれほど多くはないながらも、そのほとんどがフリーで打たれたシュートで、守護神ホスンや魅惑の助っ人クロス・バー選手の活躍がなければやられていたでしょう。前半終了間際のカウンターを仕掛けられるチャンスでもスピードアップをかけなかったので、もしかしたら前半は無理はしないというプランだったのかも知れませんが、それにしても心臓に悪い45分間でした。

 まぁそれでも家庭はともかく結果として前半を無失点で終えたことで、ある程度プラン通りに進めることが出来たのでしょう。後半になると途端に札幌の出足が早くなります。前半はポストに徹して前半ほとんど見せ場のなかったジオゴさんもディフェンスの裏を狙うようになり、徐々に流れを掴みます。前半飛ばした影響か横浜FCにも単純なミスが目立ち始め、札幌もいい形が作れるようになってきました。
 そして札幌はいつもの思い切りの良さがあまり出なかった近藤に代えて古田を投入。ヴェルディ戦でも見られた櫛引、山下、日高を3バックとする3-5-2にシフトします。すると13分、横浜FCのバックパスをカット…というよりも立ってるところに敵からパスが来たジオゴさんがそのままドリブルでずんずん進み、敵を引きつけて絶妙なスルーパス、そしてちょっと長いかと思われたボールを内村が左足アウトサイドで絶妙に浮かせてキーパーの上を通しゴール。札幌が先制します。
 シュート時にキーパーと交錯した際に倒れたまま、味方が折り重なってくるのを待つうっちーでしたが、そんな空気なんて読むはずもない俺たちのジオゴさんは、「おい、そんなとこで寝てるんでねえ、今すぐ俺と羽ばたこうぜ!」とばかりに寝ていたうっちーを引きずり起こしてゴール裏に向かい、そのままうっちーを引きずりながら羽ばたき始めます。「俺のパスのおかげだべ? むしろほぼ俺のゴールだべ?」とでも言いたげなジオゴさんのアピールにうっちーもおずおずと羽ばたきのおつきあい。そして多数詰めかけたスタンドのサポーターはもちろん、やっぱりこの日も国立競技場の陸上トラックをものすごいスピードで駆け抜けてきた岡山も加えてみんなで羽ばたいています。いい光景です。
 予定通りに先制した札幌、いつもであれば1点あれば余裕なのですが、やはり横浜FCには徹底して相性が良くないのでしょうか。守備面での不利にあえて目をつぶってまでフランサ、エデルを立て続けに投入した横浜FCに再び盛り返されるようになります。運動量はさすがにないもののさすがのキープ力を誇るフランサが前線に張ることでカイオも前線に顔を出すことができるようになり、その周りをエデルが引っかき回し、なおかつ完璧に横浜FC応援モードのスカパー!実況・解説も加えた完全アウェイの札幌は横浜FCの猛攻に晒され続け、後半33分ついに野崎にゴールを許し、追いつかれてしまいました。

 試合時間の残りはアディショナルタイムを含めても15分あるかないか。アウェイとはいえ昇格争いを考えれば、この試合での引き分けは負けも同然ですから、なんとしてもあと勝ち越し点を奪わなければいけないのですが、横浜FCに振り回された前半のツケはやはり大きかったようで、キャプテン河合が足を攣らせるなど状況は決してよくはありません。実際、同点に追いつかれた後も横浜FCに決定的な場面を作られ何度か肝を冷やしました。
 でもなんでしょうね。今の札幌って「それでも勝つんじゃねぇか」っていう気がするんですよね。根拠なんてまったくないんですよ。「それでもなんとかしてくれる」仙道さんみたいな選手がいるわけでもないですし、ケアルの使える白魔道師がいるわけでもありませんし、お鍋の中からインチキおじさんがでてくるわけでもありません。でもなんか、「最後には俺らが勝つし」みたいな雰囲気があるんですよね。
 で、それもあながち間違いじゃないってところが不思議と言いますか。試合時間も残り5分を切った85ふん、河合と交代で入ってきた岡本ヤスの突破からペナルティエリア近くで直接フリーキックを得ます。砂さんの蹴ったボールは横浜FCゴールキーパー関にセーブされゴールはなりませんでしたが、(珍しく)枠を捉えたことで砂さんも気をよくしたのかも知れません。その直後のコーナーキックで、砂さんの蹴ったボールは素晴らしい弾道を描き、途中出場の上原の人外的な高さのジャンプにドンピシャに合います。相手GKが一歩も動けない完璧なゴール。残り3分の段階で再び札幌が突き放しました。
 こうなればあとはもう守りきるだけ。横浜FCも必死に攻撃を繰り出しますが、守りに徹した札幌を崩しきることができずタイムアップ。相変わらず「土俵際の魔術師」と言えるような戦い方ですが、苦しい試合をものにして2位をキープしました。

2011年10月 6日

不完全燃焼なんだろ?

2011年Jリーグディビジョン2第29節
コンサドーレ札幌 0-0 徳島ヴォルティス
得点者:札幌/いません
     徳島/いません

 前節ヴェルディとの打ち合いを制し、暫定ながらも首位に立った札幌は、中2日でホーム厚別に徳島ヴォルティスを迎えます。徳島とは本来であれば第7節のアウェイゲームで顔を合わせているはずだったのですが、東日本大震災の影響で延期となり、その代替日程がこの29節よりも後に組まれてしまったため、シーズンも終盤にさしかかった頃合いながら徳島とはこの試合が今季の初対戦となります。そして、これまでのシーズンとは多少趣が異なる試合となりました。
 暫定1位の札幌に対して徳島は暫定3位。昇格争いを繰り広げるライバルとの直接対決、という意味でも今までの「札幌対徳島」ではあり得なかったシチュエーションではあるのですが、それより何より、徳島との試合を迎えるに当たってサポーターに特別な思いをさせているのは、今季札幌から徳島に移籍し、この試合もサイドバックとしてスタメンに名を連ねているDF西嶋弘之の存在。クラブ事情をよく知る札幌のサポーターは選手の移籍について寛容な人が多いのですけど、そんなサポーターですら彼についてはおおよそ「歓迎できない」という雰囲気。
 もちろん、決して長いとは言えない選手人生でのプロとしての決断ですから、移籍そのものについては別に思うところはないんですけど、彼の場合今回の移籍に際して、「環境やサポーターに甘えてしまっていいのかと感じた」とか「J1昇格を睨んで」とか、別に言わんでもいいことをべらべらとしゃべっていったのでね。要するにそれって「コンサドーレ札幌ってぬるいし、ここにいても昇格狙えそうにないんだよね」と言っているようなモンですからね。まぁ実際のところつい2ヶ月ちょっと前までは昇格争いところか中位以下をちょろちょろしてたわけですし、その時に未来の自分から「これから札幌は破竹の連勝を果たして昇格争いするんだぜ」などと言われても、今日はエイプリルフールじゃねぇよと思うくらいでしょう。今までのシーズンも確かに「ホントにこの人たちやる気あるの?」などと思うことも少なくなかったですから、それ自体は否定できないというか、そんなチームで6年もやってきた選手が言うのだからそれはきっと事実なんでしょうけどね。とはいえサポーターとしてはいくら正しくてもそれを口に出すのが正しいことだとは限らないと思うわけで。アニヲタなんてキモいと自覚はしてますし、実際キモいわけですけど、だからといって他人から「お前キモイ」って言われたらやっぱりむかつくのと同じですよ。悪うござんしたねキモくてフン! とか思うじゃないですか。
 まぁとにかくそんなわけなので、「オラ、どうしても試合に出てぇんだ」と言い残して出ていった優也に比べると、移籍先でも頑張って! などとは間違っても思わないというのが正直なところでして。仮に今時点で札幌が昇格争いをしていなかったとしても、徳島にだけは負けたくないなんて思ってたでしょう。ましてや昇格争いに加わってしまった今はなおさら。心情的な部分はともかくとして、消化試合数の差を考えても勝ちたい試合です。
 そんな札幌はFWのジオゴさんが肉離れから復帰したものの、宮澤離脱の間ボランチを務めている岩沼が急な体調不良で欠場となります。さらに砂川、内村が連戦の疲労のためかベンチスタート。長期離脱を余儀なくされている芳賀も含めると、レギュラークラス5枚落ちという苦しいメンバー事情です。ひとまずもうできそうな人が高木純平しかいないのでボランチは河合主将と純平の2枚、必然的に今度はサイドバックが足りなくなるので、左サイドバックには上原を起用。ディフェンスラインに26番、25番、23番が並んでよくわかりません。登録上は1トップですがポジション的には近藤とジオゴさんの2トップの形で、左右に岡本と古田が並ぶという形。ところでレモスって秘密兵器のままなんでしたっけ。

 そんなわけで試合ですが、連勝中で調子に乗っているらしい札幌が立ち上がりから積極的に攻撃を仕掛けます。2試合連続ゴールを決めて調子に乗っているらしい近藤がオープニングシュートを放つし、久しぶりにスタメンの岡本や古田もよくボールに絡んで攻撃を作るし、ジオゴさんも徹底マークを受けながらもボールを持てばやはりいい仕事するし、河合主将もミスっててへぺろするし、途中徳島にペースを握られる時間もあり、柿谷の個人技に引っかき回されることはあったものの、山下は相変わらず強いし、櫛引も若いのにルーキーなんてすごいし、ホスンが珍しくあまり仕事をさせられてないというここ数試合では一番安心して見ていられる試合です。もっとも、それでも結局シュート数は徳島のほうが多かったあたり、いつものコンサドーレらしさは失っていなかったのですが、ここでいつものように点が取れていればだいぶ助かったと思うんですけどね。エリゼウ、三木隆司というレギュラーセンターバックを丸ごと欠いている徳島のゴールをこじ開けるには至らず、前半は0-0で終了。

 後半も開始からしばらくは札幌が徳島陣内に攻め込むシーンが見られますが、15分を過ぎたあたりから徐々にラインをコンパクトに保てなくなり、中盤のスペースを徳島に使われるようになります。さすがに連戦の疲れも出てきたのでしょう。試合間隔が短いと肉体面の疲労ももちろんなんですが、やっぱりきついのは精神面での疲労ですよね。サッカーのように刻一刻と周囲の状況が変化するスポーツの場合、敵や味方、ボールの位置などさまざまな情報を集め、常に先を予測しながら最適と思われる判断を、可能な限り早くし続けなければいけません。そのために必要なのは集中力です。集中力が散漫だと相手がフリーになっていたのを見落としたり、判断が遅れてとっさの事態に対応できなかったり、できたところで間に合わなかったり、なんでもないところでミスをしたりしてしまいます。試合中に「あ~そろそろ空から美少女が落ちてこねぇかなぁ」などと考えてたら、さっくりと失点したり決定的なチャンスでトラップミスしたりしかねないですし、よしんば不思議なペンダントをつけたおさげでワンピースの女の子が落ちてきたとしても、それはそれで40秒で支度することを求められたり3分しか待ってもらえなかったりいろいろ不都合が出ますから、選手は90分間全力で集中することを求められるわけです。
 でも、車の運転なんかもそうですけど、集中力を保ち続けるのってけっこう大変ですよね(えらそうに言ってますけどオレはペーパードライバー)。よく「身体は疲れてるだろうけど、そこは気力でカバーしよう!」なんて言う人がいますけど、実際身体が極限まで疲れてるときはたいてい心まで疲れているもんですよね。自分では集中しているつもりでもやっぱりいつもと違う、なんてこともあると思います。
 それでも最後までギリギリの集中は保ち続け徳島にゴールを割らせず、逆に交代で入ってきた砂さんやうっちーを中心に反撃を試み、いくつかいいチャンスも作り出していたのですが、なんとなく岸谷五朗の若いときに似ているオスンフンの守るゴールを破ることができず、0-0のまま試合終了。試合前のサポーターの入れ込みとは裏腹に、実際の試合は割と何もないまま終わったという感じです。オープニングで「だ・い・じ・けん♪」と歌っておきながら本編では大した事件が起こっていないのと割と似ているのかもしれません。一番大きかったのはユース所属の前くんのデビューでしたね。
 まぁ、札幌は試合終了時点でほとんどの選手がその場にへたり込んでしまうほどの激戦だったヴェルディ戦から中2日での試合。それを考えればよくやったと言えると思いますし、状況的には勝たなければいけなかったのは徳島のはずですから、そういう意味では引き分けというのはベストではないけど悪くないは結果だと思います。

2011年10月15日

ユース祭

第91回天皇杯全日本サッカー選手権大会2回戦
コンサドーレ札幌 2-3 水戸ホーリーホック
得点者:札幌/横野(U-18OB)、榊(U-18)
     水戸/誰か x 3

 日本最大のオープントーナメントである天皇杯。今年で91回目という伝統と歴史を持つ権威ある大会ですが、Jリーグが出来て日本のサッカーがプロ中心になるにつれてだんだんと日本サッカー界の実情に合わなくなってきている側面も否定できず、そのつじつまを合わせるためのレギュレーションの変更が頻繁に行われるものの、未だ試行錯誤といった感じでなかなかこれといった解決策が見いだせていないのが実情ではあります。
 まぁどのような形で行われている以上、プロにとっては(建前がどうであれ)昇降格の関係するリーグ戦が最重要なのは動かしがたい事実なわけで、特にこの時期はリーグ戦が佳境となっていますから、「獲れるタイトルは全部獲る」という豪気を体現できるような力のあるチームは別として、優勝争いや昇降格争いに関わっているチームにとっては、どうしても天皇杯に対する優先度は低くなりがちです。逆にリーグ戦では優勝争いから後退してしまい「ひとつくらいはタイトル獲らないとなぁ」というチームとか、「この辺で存在をアピールしとかないとなぁ(主にスポンサー様に向けて)」というチームにとっては、短期集中型のトーナメントは格好の舞台なわけで、プロ相手に一泡吹かせてやろうというアマチュアチームも含めて、そういう意識の差で意外なチームが台頭したりというのも天皇杯の醍醐味のひとつじゃないかと思ったりもするわけです。札幌もリーグ戦でJ2最下位に終わった年にベスト4まで進んだり、かといってその翌年はリーグ戦でもダメだった上に天皇杯でもアマチュアにさっくり負けたりしてましたよね。
 まぁそれはともかく、今季の札幌はどっちかといえば、現在J2で2位につけている札幌は当然前者なのであり、加えてこの翌週からは10日間で4試合を行わなければならず、しかもそのうち昇格争いのライバルであるサガン鳥栖と徳島ヴォルティスとの試合も含まれています。連戦の疲労度などを考えればできれば主力は休ませるべきであり、そしてベストメンバーうんちゃらの規程のあるJリーグと違って天皇杯はJFA主催。であればユース選手を使うのに何も問題はない、というよりかはむしろ積極的に使えってなもんです。
 そしてその辺しっかり空気を読んでくれるノブリン、二種登録させているユース選手5人全員を試合メンバーにいれ、そのうち前貴之、荒野拓馬、奈良竜樹の3人がスタメン、横野純貴、古田寛幸、三上陽輔のユースOBもスタメンに入りました。そして彼らを残したまま残りの2人(榊翔太、小山内貴哉)もキッチリ使い、ピッチ上には8人ものユース現役・OB並び、水戸所属のユースOB鶴野大貴を加えると総勢9人という札幌ユース祭。そんなわけですので、ほぼベストメンバーで臨んできた水戸に負けはしたものの、横野と榊のゴールで一時はリードを奪う展開を見せたのですから、サポーターも心底勝ち負けなんて些末なことだと思ったに違いありません。
 もっとも、この試合に出たOBたちもまだリーグ戦でスタメンを奪い取るまでには至っていないことを見ても、彼らの活躍が即トップチームの明るい未来を保障しているわけではないのですけど、それはそれとしてクラブが昔から地道に進めてきた若年層の強化が実を結びつつあるのもまた事実だと思います。彼らが続々とチームの中心になり、そして彼らを高値で売らずとも済む時代が来ればいいなと思います。

2011年10月18日

こういう時に限って

2011年Jリーグディビジョン2第31節
コンサドーレ札幌 0-1 サガン鳥栖
得点者:札幌/いない
     鳥栖/豊田?

 天皇杯を挟んで2週間ぶりのリーグ戦。延期分の未消化試合を含めてもあと10試合しかありません。数字上の可能性はめんどくさいから調べてませんけど、「勝点差が残り試合数以上になると逆転は難しいの法則」に照らし合わせると、前節終了時点で3位サガン鳥栖、4位ジェフユナイテッド市原・千葉の勝点が50ですから、徳島ヴォルティス(勝点49)、栃木SC(勝点43)、7位東京ヴェルディ(勝点41)あたりまでに絞られたと言えるでしょう。そして実際に昇格の権利を得られるのはこのうち3チーム。4チームはトラベルチャンスで「見送り旗」を持たされる運命にあります。
 で、状況的には7位ヴェルディと6位の栃木SC(勝点43)はちょっと厳しいと言わざるを得ず、そしてここまで来たら東京が圏外に落ちる可能性はほぼない、つまり当選確実でしょうから、普通に考えりゃ残りの2枠を勝点4の間にひしめく札幌、鳥栖、千葉、徳島の4チームで争うという図式が成り立つわけです。

 その3位鳥栖とのホーム厚別での対戦です。

 攻撃力、守備力共に抜きんでているわけではないにせよ、得点数(48点)は東京ヴェルディ、東京に次いでリーグ3位、失点数(23失点)も東京、札幌に次いでリーグ3位。負け試合の数も東京に次いで千葉と並ぶ2位タイの6試合。「J2オリジナル10でうんちゃらかんちゃら」と言われなくするための最大のチャンスであり、悲願の昇格にかける思いはおそらくどこよりも強いでしょう。現在J2で一番厄介なチームと言えると思います。鳥栖はこの試合に勝てば得失点差で札幌を上回って2位に浮上します。当然札幌は負ければ3位になり、他会場の試合結果次第では昇格圏外に落ちる可能性もあります。それ以上に前回対戦では負けているだけに、ホームでのこの試合は是が非でも勝ちたいところ。鳥栖は攻撃の要であり、前回対戦でもゴールを決められているキムミヌがケガで欠場。対して札幌は天皇杯で主力を休ませ、現状ほぼベストと呼べるメンバー構成で万全の体制で臨んだんですが…。この大一番で最も活躍したのは、ジオゴさんでもうっちーでも、ましてや豊田でも藤田でもなくて、主審でした。

 そうなんだよなー。今季はここまで何がラッキーだったかといえば、「どの試合も存外に審判がまともだった」ことが大きいんですよね。もちろん細かいところでは「?」と思ったりするジャッジもなくはないんですけど、試合全体を通じて見ればストレスを感じることはほとんどなかったんですよね。J2のほかの試合ではけっこうそれ絡みで荒れた試合もあったみたいですから、別にJリーグの審判員の技術が向上したわけではなく、単純に今までは運がよかったということなんでしょうね。基本自分はレフェリーにはきっちりとしたリスペクトを持ちたいと思ってるのですけど、「カードで仕切ろうとする」タイプは、レフェリーとかそれ以前に人としてあんま尊敬できないです。

 もっとも、この試合でレフェリーがまともでも勝てたかどうかはまた別の話ですんで、「レフェリーさえまともなら札幌は強いんだゾ!」なんてトンチキなことを言うつもりはまったくない…というか天皇杯を若人に任せてベストメンバー組んでおいてこの試合内容じゃ、もうちょっと気合を入れ直さないとダメですよね。鳥栖がまったく攻めに出てこようとしなかったのでボールを持つ時間は多かったのに、惜しかったシーンといえば前半の純平のシュートと後半の岩沼のクロスを内村が合わせたシーンくらいでしたよね。ジオゴさんが2枚目のイエローで退場(1枚目はしかたないとしても、このシーンはイエローに値するような悪質なプレイには見えなかったのですが…)してからは相手も余裕を持って守られてしまってましたから、得点取れそうな感じがなくなっちゃいましたしね。選手交代で打開しようにも、ああいう展開だとなかなか難しいでしょう。1人でなんとか出来ちゃうような選手がいればまだ話は別ですが、ひみつへいきも相変わらずひみつのままですし。
 そんなわけで、結局序盤のPK以外にゴールの生まれないまま試合終了。札幌は厚別での今季初負けとなったわけですが、こちらとしては「意地と意地のぶつかり合い」が見たかったですし、そういう試合が見られれば正直言って勝敗はどっちでもよかったんですよ。そりゃあこの試合は「勝ったほうが昇格デスマッチ」というわけでもなかったですから、そういう試合に比べればまだ入れこみもさほどではなかったかもしれませんけど、そういう滅多になシチュエーションを、ああいうふうにぶちこわされるというのは勘弁願いたいところです。見所と言えば交代で入ってきた「あんにゃろ」ことあんにゃろが、あんにゃろ的なプレイであんにゃろカードをもらったシーンくらいですもんね。

 さて、札幌は今季8敗目を喫し順位も逆転。千葉がザスパ草津に負けたため3位には踏み止まれたものの、4位の徳島ヴォルティスに勝点差1にまで迫られてしまいました。いやだわ。早くすりつぶさないと(堀江由衣声で)。
 ただまぁ、たとえ1でも上にいることは間違いないんですからね。勝ち続けさえすれば他のチームが札幌を上回ることはできないわけで、まぁそれが難しいのはよくわかってはいるんですけど、少なくとも順位の上では、札幌は決して不利な立場ではないことは確かですからね。まぁジオゴさんの退場に加えて河合主将も累積警告でおやすみゲットだぜ、という緊急事態だったりするんですけど。

2011年10月20日

\心配ナイサァァァァ/

2011年Jリーグディビジョン2第6節
京都サンガFC 4-0 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/いません
     京都/工藤、中村x2、久保

 2位・3位の直接対決となった第31節のサガン鳥栖ですっきりしない敗戦を喫し、3位に落ちた札幌。そこから中2日で今節は第6節、西京極運動公園競技場にて京都サンガFC戦を迎えます。東日本大震災による中止期間の代替日程ですので、別に時空がねじ曲がったわけでも円環の理に導かれたりしたわけではありません。飛び飛びで行われてきた代替日程もこの月末で帳尻合わせの様相を呈しており、札幌はこの試合の後は再び中2日で鳥取県鳥取銀行鳥競技場(直訳)にてガイナーレ鳥取戦があり、そしてさらに間髪おかずに水曜日に徳島の大塚製薬スタジアムにて徳島ヴォルティス戦が待ち受け、札幌に戻る暇もない過酷なアウェイ3連戦となります。
 その3連戦最初の相手、京都サンガFCは前節終了時点で勝点34の14位と、数字上はまだ昇格の可能性が残されているものの、現実的には脱落と言っていい状況。ここ2戦も連敗しているのですが、ジェフユナイテッド市原・千葉には今季2戦2勝とハマれば強いチームですし、前回対戦でも札幌が勝ったものの、若者3トップに翻弄され先制を許すなど苦しい試合でした。
 そして札幌はジオゴさんが前節の退場で出場停止、河合主将も累積警告で出場停止と、攻守の要を欠く苦しい状況、加えてここ西京極にはめっぽう相性が悪く、リーグ戦ではここまで過去8試合で1勝7敗という大苦戦。リーグ戦唯一の勝利は2007年、前回昇格した年で、この時は五山送りの関係で夜間に試合が出来ないため、真夏だってのにまだ日の落ちきらない17:20というキックオフ時間で、当然前半は西日が酷くて、右サイドバックやってた西澤画伯がメインスタンドの日陰から出てこようとしなかった試合ですね。あの時は西なんとか選手のゴールで先制して、その後逆転されたけどダヴィと石井謙伍の連続ゴールで逆転したんでしたっけ。いい思い出です。

 まぁそんな苦しい状況で迎えた試合は、立ち上がりから完全な札幌ペース。高い位置からプレスをかけてボールを強引にふんだくり、サイドバックやボランチといった後ろの選手もガンガン前に出てパスを繋げて攻め込むという、「アクションサッカー」という言葉を数年ぶりに思い出すほどの連動性で、次々に京都ゴールに襲いかかります。「札幌ってこんなに強かったっけ?」と思ってしまうほどの圧倒的な試合展開でしたが、しかし肝心のゴールが割れません。いつもなら決まっているはずのシュートも枠を外れたり、シュートまで持って行ける流れでもボールが流れてシュートを打てなかったりしてしまいます。最初は「そのうち決まるだろう」と気楽に構えていましたが、ゴールライン上の混戦を押し込めなかったあたりから暗雲が立ちこめ、コーナーキックからのチャンスを連続で京都GK水谷とクロス・バー選手に防がれて得点できなかったときには、かなりイヤな予感がしていました。その後も攻撃は機能していたので杞憂に終わればいいなぁと思っていたんですが…。30分を過ぎたあたりから徐々に京都が盛り返してくるようになり、38分には宮吉のクロスを工藤が丁寧に合わせて先制ゴールを許すと、前半アディショナルタイムにはアタッキングエリアでボールを持った中村に誰もプレスに行かず、そのままドリブルで中に切り込まれてゴール隅に決められ2失点目を喫してしまいます。

 後半も立ち上がりこそ札幌が攻め込む気配を見せるものの、早く追いつきたいと気ばっかりが焦ったようで、単調な攻撃に終始し、余裕を持った京都を崩せず。逆に20分にはコーナーキックからのこぼれ球を久保に押し込まれ3失点目。今季ここまでの試合で札幌は1試合で3点以上取られたことはなく、また確かコーナーキックからも失点を許していなかったはずですけど、それが両方とも崩れ去ったことが選手たちにとって相当なショックだったのでしょうか。ここからの札幌は、攻撃も守備も前半の好調が嘘だったかのようにてんでばらばら。この噛み合わなさっぷりはアレだ、政治家の答弁みたいだな、などという風刺で社会派を気取っている間もなくその6分後には久保に翻弄された挙げ句に中村に再び決められ4失点目を喫し、今季最多失点で敗戦。

 というわけで、西京極の鬼門っぷりを改めて確認する試合となってしまいましたが、実は過去の敗戦の内、4失点した試合が3つもあるんですよね。この試合で4つ目の4失点試合。通算成績1勝8敗、7得点24失点というのは鬼門どころの話じゃないですよね。何しろ古都・京都ですからね。鬼くらいいてもおかしくないですし、鬼門じゃ物足りない気がします。鬼より強い、鬼より怖いと言ったらなんでしょうね。やっぱカーチャンでしょうか。門といえば玄関。玄関に怒りの形相のカーチャンが立ってたら何より怖いですからね。「母門」と呼ぶのがふさわしいかもしれません。そろそろ「門」がゲシュタルト崩壊してきました。
 それはそれとして、改めて河合主将の存在の大きさが浮き彫りになった試合でしたね。センターバックやってた頃はともかく、ボランチになってからは普段はあんまり効いてるようには見えなかったばかりか狙い澄ましたようなキラーミスパスを繰り出したりって感じだったんですが、やっぱ札幌にとって絶対に欠かせない人だったんですね。いなくなって初めてその偉大さがわかるというのもどうかと思いますけど、勝てたかどうかはともかくとして彼がいれば少なくとも2失点目や4失点目みたいなことはなかったんじゃないかと思います。まぁ「今まで3点以上取られなかった」といっても、フクアリでの千葉戦みたいに「結果的に2失点で済んだ」ってだけな試合もけっこうあったんで、こういう試合もあるでしょう。前回昇格した2007年の時だって、ダヴィというオモシロ人…いや点取り屋もいましたが、どちらかといえば武器は守備力であり、実際J2で一番少ない失点数で優勝したんですが、それでも終盤には息切れして、最後のクールに入ったあたりから調子を落とし、ヴェルディに5失点食らったり、連敗を繰り返したりしてたんですよね。
 終盤になっていろいろきつくなってくるのはどのチームも同じですから、必ずしも実力(もしくは順位の差)通りの結果になるとは限りません。そんな中で4位の徳島ヴォルティス、5位の千葉が共にアウェイで敗れたのは偶然ではないと思いますが、ともかくかろうじて札幌は3位の座はキープ。ただ、札幌にとってラッキーに見えて、徳島や千葉にとっても、自分たちが負けたのに札幌との差が変わらなかったわけですから、果たしてラッキーと言えるのかどうか。
 それ以上に1点も取れなかったのは痛かったですね。このまま混戦が続けば最終的に得失点差が明暗を分ける可能性も充分に考えられます。もともとそんなに攻撃力が高いわけでもないチームが、一時期は-4だった得失点差をこつこつと積み重ねてようやっと+14まで持ってきたのに、それを一気に4もマイナスされてしまったのはけっこう痛いです。あれですよね。せっかく楽しみに取っておいたプリンを誰かに食べられた気分。せめて1点でも取れていればよかったんですけどね。珍しく16本もシュート打ったりするから点が取れなかったんだな、きっと。ふん。

2011年10月25日

だからどうした

2011年Jリーグディビジョン2第32節
ガイナーレ鳥取 1-0 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/いない
     鳥取/はめど

 これが昇格争いのプレッシャーなんでしょうかね。サガン鳥栖、京都サンガに連敗中、そして河合主将もジオゴさんも戻ってきて、ほぼベストと言える布陣を組むことができ、相手は目下20チーム中19位のガイナーレ鳥取。「負けたくない」に加えて「勝って当たり前」という空気がどれほどのプレッシャーだったのかはわかりませんが、今日も今日とてゴールを割ることができず、逆に一瞬の隙を突かれて失点を喫し、3連敗となってしまいました。昇格争いのライバルたちもさすがにそうそうおつきあいはしてくれず、札幌はこれで4位に後退、昇格圏をはじき出された格好になっています。

 いやはや、どうにもこうにも「らしくない」というかなんというかって感じですね。結果だけ見れば鳥栖はともかく順位的には下のチームに連敗と、シーズン当初の札幌は相手の実力や順位に関係なくこんな感じでしたけど、その時とはまたちょっと違うように思います。もう少し踏み込んで言えば、シーズンの最初の頃は「何してもうまくいかない、というかそもそも何をしたいのかよくわからない」という状態だったのが、今は「勝ってた頃はできてたことがうまくいかない」という感じ。
 今まではいろんなことがうまく行ってたから勝ててたのさ、なんて言われればそれまでなんですが、ここのところはいい意味での思い切りの良さがなくなったというか、妙に縮こまった感じが見受けられます。ミスしたくないとか、負けたくないという思いはこの順位にいればこそ余計に強くなるんでしょうけど、それが大きすぎたばかりにコンサドーレの選手にしか見えない「エア味方」にパスしちゃったりとか、J-POPばりに何かを探し続けたりしちゃってる感じです。

 やっぱり人間守りに入っちゃダメってことなんでしょうかね。もっとこう、コンサドーレはアウトローであるべきなんですよ。コンサドーレは王道を狙っちゃダメなんですよ。性格の違うかわいい女の子が4人くらい出てきてゆる~く日常を送る学園ものやろうとしたってダメなんですよ。あまり萌えないデザインの女子キャラが特に理由も説明しないまま異形の化物をざっくざっく切ってありえないにもほどがあるくらい血がどばどば飛び散って挙げ句には町の人もクラスメイトもみんな化物に食われちゃったと思ったら実は生きててある意味お芝居だけど化け物はホントでそれでぶっちゃけお前も化物なんで続きは劇場版で! くらいの文字通り血迷ったものじゃないといけませんよね。

 前回対戦でも勝ったとはいえ鳥取はいいサッカーしてましたからね。まぁそれでも19位というところに「いいサッカー」と「勝てるサッカー」は必ずしも一致するわけではないのがジレンマだと思うんですけどね。その辺は札幌そうでしたけど(過去形なのか進行形なのかは保留)、19位でもこれぐらいのサッカーはできるということなのか、このサッカーじゃなければ順位はもっと上だったのか、そういうのを考えると悩ましいですよね。今はJ2初年度ということでサポーターも納得できるかも知れませんけど、勢力図はそのうち変わっていくわけですし、今季は栃木SCがJ2参入3年目で上位争いを繰り広げていたのですから、少なくとも今は新参とか古参とか人参とかあまり関係ないですよね。

 まぁそれはそれとして3連敗で4位に転落、と改めて事実を書き連ねるわけですが、まぁ次の試合で徳島ヴォルティスに勝てばまた3位になりますから、そこで頑張ればよろしい。というかですね。前にも書いたことですが、もう最後の最後までこういう思いができれば、結果ダメだったとしても充分楽しめたと言えるのですよ。ただまだ試合が残されているのにこのままずるずる行ってしまったら、サポーターの希望が散っただけでなくご丁寧に「ロスタイム3失点」という新たなトラウマまで植え付けたあの2005年と同じことになってしまいます。だから徳島には最低限何が何でも勝たねばなりません。逆に徳島に勝てばこの3連敗なんてどってことないですよ。

2011年10月28日

奈良時代

2011年Jリーグディビジョン2第7節
徳島ヴォルティス 0-2 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/近藤、内村
     徳島/いなかった

 東日本大震災による延期の代替開催も、ようやくこの試合で最後となりました。札幌にとっても地獄のアウェイ3連戦、阪神風にいえば「死のロード」といった感じの長期遠征もこれで終了となりますが、3連敗という状況で迎えたその試合がこの相手、というのは何の因果なんでしょうかね。目下3位の徳島ヴォルティスとの試合です。鳥取戦での敗戦で4位に転落した札幌ですが、徳島との勝点差はわずかに2。つまりこの試合で勝てばまた再び3位に返り咲けるということでありますが、逆にこの試合に負ければ徳島との差は4にまで広がってしまいます。残り試合数を考えるとちょっと厳しいですし、4連敗という精神的なダメージも加味すると事実上今季終了フラグが立ってもおかしくありません。
 3位と4位の間に存在する大きな壁のあっち側とこっち側をめぐって行われる、まさにのるかそるかの大一番。もっとも、その壁の向こうに待っているのは決して自由の新天地ではないどころか、むしろもっとつらい茨の道だったりするのですけど、勝つことによってのみ先が見えてくるというギリギリの状況において札幌が活路を見いだすには、「どこまで開き直れるか」というところ。そうでなくても3連敗中で、過去8戦して1勝2敗5分というあまり相性のよくないポカリスエットスタジアムでの試合。並大抵の開き直りではいかんともしがたいでしょう。「やっぱり小学生は最高だぜ!」と言いはなった長谷川昴さん(16)くらいの開き直りっぷりが求められます。
 というわけで札幌がどんな感じで開き直ったかといえば、DF櫛引がU-18日本代表にドナドナされた穴埋めとして、U-18所属の奈良竜樹を大抜擢。高卒ルーキーの代役にさらに若い選手を入れたわけですが、そればかりか、MF荒野拓馬、MF前貴之というユース所属選手の2人もベンチ入り。「若けりゃ若いほどいいんじゃ」ということなんでしょうか。札幌は選手層が薄いとはいえ、いくらなんでも開き直りすぎのような気もしますが、昇格争いに加えて若者への期待と両方があるとくれば、サポーターも開き直って楽しむしかないですよね。

 そんな感じで試合ですが、前半はどちらかと言わずとも徳島のペース。徳島のチーム総得点は前節終了時点でリーグ3位の45得点ですが、そのうち半分近い21得点を佐藤、津田、柿谷の3トップが挙げています。この試合もその3人を中心にそこへパスを供給する濱田がうまく絡み、札幌陣内に攻め込みますが、ここしばらくの「前半から勝負かけちゃう?ねぇかけちゃう?作戦」が結局ゴールに結びつかないことを学んだ札幌も、以前の「前半はとりあえずバッチ☆恋」作戦に戻すことにしたようです。京都に4点取られたことが大きく影響して失点数も3位タイに落ちてしまいましたが、それでも「守る」と決めたらそうそう簡単にゴールを割らせないのが今季の札幌です。頼んでもないのに失点してはお互いに「今のはこいつが悪い」という視線を交わしていた頃から比べると信じられないことですが、高い集中力で徳島の攻撃に対応。学徒動員となった奈良くんも、とても現役高校生とは思えない貫禄で強力3トップを封じ込めます。全国高校選手権で格の違いを見せつけていた櫛引ですら、デビュー戦では緊張してる様子が見えたものですが、なんか普通に何試合も出てきたような落ち着きがあります。柿谷とのマッチアップでもほぼ互角に渡り合い、180cmとセンターバックとしては決して大きいほうではないながらも、同じく身長の割にはジャンプ力のある西なんとか選手と競り合ってなおかつ勝っちゃうんですから、一部サポーターが彼を「さん」付けで呼ぶのもわかる気がします。

 そんなわけで前半は若干危ないシーンはあったものの、0-0というのはおそらくノブリンにとっては予定通りスコアでしょう。ところが徳島のヒゲ監督にとっては予定外だったんでしょうかね。まだ日程は残されているとはいえ、徳島にとってみれば札幌に逆転されなければいいのですから、この試合は引き分けでも充分な状況です。もっとも、徳島はこの後ジェフユナイテッド市原・千葉やサガン鳥栖といったライバルとの対戦が残されていますから、ホームで札幌を確実に蹴落としておきたいという考えもあったのかもしれません。あるいはこの試合で勝てば鳥栖の結果次第では2位に上がりますから、あわよくば…というよりはたぶん「なるたけ上に行ってなるたけ早く安心したい」という思いが大きかったのかも知れません。そういう意味では、プレッシャーは勝たなければいけない札幌よりもむしろ徳島のほうが大きかったと言えると思います。前半攻めていながらゴールを奪えなかったことで、とにかく早く先制点が欲しいという焦りがあったのでしょうか。ホスンからのなんでもないロングフィードの処理をエリゼウが目測を誤り、こぼれ球を拾った内村からジオゴさん→近藤へとつなぎ、近藤がきっちりと左足で決めて先制します。劣勢でもワンチャンスをモノにしてしまう、いい時の札幌です。、あぁ試合が劣勢な時点でいいと言えるのかどうかは不明ですが。
 とにかく大事な試合での大事な先制点を奪った近藤は、「なあ、これほとんどオレのゴールだべ?」というジオゴさんに羽ばたかせるヒマも与えずにサポーターの陣取るスタンドめがけて駆け出します。恒例の岡山ダッシュは当然として、自陣にいたはずの山下や奈良さんまでが駆けつけて喜びを爆発させます。
 そして先制してたいした気分の良くなった札幌は俄然動きが良くなります。追いつこうと攻めてくる徳島に対してしっかりと守備ブロックを作り自由を許さず、逆に前がかりになった徳島にカウンターを見舞うシーンも増えてきます。ただどうもジオゴさんのプレイが雑でして、決まりかけたカウンターもやりきれなかったり(二重の意味で)で、どうしちゃったんでしょうね。近藤が羽ばたかせてくれなかったのがよっぽど頭に来たのでしょうか。
 まぁそんなわけで1点リードのまま試合は進んでいきます。徳島も完全にリズムを崩してしまったようで、前半のような攻撃が見られなくなります。ヒゲの監督も選手交代で流れを変えようとするものの、素人目にも疑問符が付く交代を繰り返し、巻き返すまでには至らず。逆に後半35分、たぶん砂さんからの何でもないクリアボールにうっちーがそのスピードを生かして相手を振り切り、角度のないところからシュート。GK榎本はこれをはじきますが、そのはじいたボールがゴールイン。札幌が追加点をゲットします。
 残り時間を考えればこのゴールは札幌にとってはダメ押しと言えるもの。余裕を持って守れるようになった札幌は残り時間をキッチリ守り抜きます。もう「3分あれば3点取られる」なんて言わせません。いや言うけど。一生ネタにするけど。

 というわけで数少ないチャンスをきっちりものにし、そしてきっちりと逃げ切った札幌が3位の座を奪い返したというこの試合。特筆すべきことはこれだけのガチンコ試合だったにも関わらず、両チーム合わせてイエローカードが1枚も出ていないことでしょうね。これは素晴らしいと思いますよね…と鳥栖戦を振り返りながら言ってみる。

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