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2007年5月 アーカイブ

2007年5月 1日

ウノゼロ

2007年Jリーグディビジョン2第12節
コンサドーレ札幌1-0愛媛FC
得点者:札幌/謙伍
     愛媛/なし

 前節休みで2週連続のホームゲーム。万全の状態で迎え撃つのは、11位の愛媛FCです。JFLからの参入1年目の昨季は9位というまずまずの成績を残すことに成功した愛媛ですが、今季はこれまでのところまだ2勝と思うように勝ち点を伸ばせずにいます。レンタル選手が多いというのがその要因のひとつで、昨季11ゴールを挙げた菅沼実や、44試合に出場した高萩洋二郎といったレンタル選手が所属元に復帰してしまい、チーム強化もすんなりとはいかないようです。とはいえ、性急にJリーグ参入を目指さずにまずはユースチームの強化から始めたこのチームのコンセプトは変わっておらず、ヤマハ出身で協会のコーチングスタッフやジュビロ磐田のユースコーチや監督などを歴任するという、コンサドーレ前監督のヤンツーとよく似た経歴を持つ望月一仁監督の下、手っ取り早い結果を求めて守備一辺倒のサッカーをするのではなく、若い選手の多いチームに磐田式アクションサッカーを植え付けています。Jリーグに参入してまだ2年目。資金面でも実績面でも現段階ではサポーターやスポンサーがJ1昇格を絶対の目標としているわけではないでしょうから、結果よりも内容を求めることに対し比較的理解されやすい環境にあると言えるだけに、ただなんとなくリーグを戦うのではなく、まずは土台を築こうという目的が見えます。そういう意味では、レンタル選手は多くても継続的な強化をしているとも言えます。まぁ要するにコンサドーレが8年かかってようやく気づいたことを最初からやっているわけで、こういうチームには成功して欲しいなぁと思うわけです。
 だからといって試合となれば話は別でして、一応首位のチームである以上11位のチームにホームで負けるわけにもいきません。菅沼が抜けたとはいえ、昨季14ゴールを挙げたエース田中俊也は健在。その田中と2トップを組むのは、第9節福岡戦で負傷した大木勉と交代での出場となった藤井貴。名前だけを見ると乙葉と結婚した吉本興業のお笑いタレントを思い出しますが、よく見ればこの2トップ「タカ&トシ」です。ちなみにタカ&トシは札幌ドームからほど近い西岡北中出身でしたっけ。

 で、札幌はイエロー累積で出場停止の西澤画伯に替わって池内が登場した以外はいつものメンバー。中2日で北海道まで遠征してきた愛媛に対し、中5日で移動なしの札幌。コンディション的には圧倒的に札幌が有利…なはずですが、キックオフからわずか1本のパスで赤井にシュートを打たれる不安な立ち上がり。序盤は劣勢に立たされます。
 とはいえ、愛媛としては堅守を誇る札幌…という表現には未だに「慈愛に満ちあふれたフリーザ」くらいの違和感があるのですが、とにかくリーグ1失点の少ない札幌に対し、コンディションに差があるのは百も承知の上でまだ動けるうちに勝負をかけようという意図があったと思われ、とにかくガンガン攻めてくるものの、ミスが多く札幌ゴールを脅かすまでには至らず。そうこうしているうちに札幌も次第に落ち着きを取り戻しますが、チャンスメーカーである西谷の調子がいまいち。もともと西谷はドリブラーでもパサーでもなく、ひらめきやイメージで勝負するタイプのプレイヤーであり、要するに自身の頭の中のイメージと実際のプレイの「シンクロ率」がその出来不出来に大きく影響してくるのですが、この試合のシンクロ率はだいぶ低かったようで、やりたいプレイはわかるんですけどボールはあさっての方向に行ってしまう始末。そんなわけで札幌もシュートまでなかなか持っていけず、芳賀の超精密ボトル直撃シュートや、ダヴィの変なドリブルからの馬シュートがクロスバーを叩いたシーンが惜しいと言える程度で、前半は0-0で終了します。

 後半は、やはり運動量の落ち始めた愛媛を札幌が少しずつ追い詰め始めます。試合中様々な表情を見せるダヴィと対照的に何食わぬ顔度で言えば西澤画伯にも優るとも劣らないカウエも何食わぬ顔で前に出てくることが多くなり、惜しいシーンも増えてきました。普段はあまり早めの選手交代を行わない三浦監督も、後半5分に早くも征也に替えて砂川を投入。疲れてくる頃にドリブルの得意な砂川が出てくるというのは相手にとってすごくイヤでしょうし、スペースの生まれやすい状況であれば砂川自身のプレイも生きてきます。もともと前目のポジションならどこでもこなせる器用さを持っている選手ですから、こういう選手がベンチに控えているというのは強みです。テレビ番組でいうなら「懐メロ特集」とか「アニメ名場面集」くらいの便利さです。その砂川を中心に攻め込む札幌は、画伯に替わって出場している右サイドバックの池内も果敢なオーバーラップを見せるようになりますが、あと1歩が足りず得点を奪えません。
 勝ち点3が欲しい札幌は、後半17分に元気に替え謙伍を投入。この交代策がずばりとハマります。23分、西谷からのサイドチェンジのロングパスがワンバウンドしたところを、謙伍がダイレクトでシュート。強烈な回転のかかったボールはキャッチした愛媛GK佐藤の手をはじきゴールの中へ飛び込みました。謙伍は今シーズン初ゴール。当然のように「芳賀ラッシュ」の洗礼を浴び、ついに均衡が破れました。「確実なプレイをしよう」という意識が強かったのか、去年あたりから無難なプレイをしようとして小さくまとまりかけて、まぁ要するにオレ個人の好みから言えば「つまんない選手」になってしまいつつあった謙伍が、ちょっと無理な体勢ながらも迷いなくシュートを打ったことはちょっといい感じです。まぁ確かに相手GKのキャッチミスとも言えるゴールでしたけど、そういう積極的なプレイが得点に繋がったのだと思います。
 欲を言えば2点目を取って欲しかったですし、実際取れるチャンスもなかったわけではないですが、今の札幌にとっては1点を守りきるのはそんなに難しい話ではありません。といっても、無失点に抑えるというのはそう簡単なことではないでしょうし、実際ゼロに抑えることができたのは、フィールドを縦横無尽に走り回っていた芳賀の獅子奮迅の活躍によるところが大きかったのですけどね。そういえば、かつてそれなりに結果を残していた頃は、山瀬(現横浜F・マリノス)や今野(現FC東京)のような、犬のように駆けずり回る選手がいたものですけど、やはりこういう選手はチームに1人はいて欲しいものです。まぁ芳賀の場合は、相手を追いかけてさらに噛みついて食いちぎるという表現がよく似合うので、犬と言うよりは狼っぽいような気もしますけどね。
 まぁそんなわけで、試合終了間際には危ないシーンもあったものの、アディショナルタイムの愛媛の猛攻を凌いで、今季8試合目の無失点試合で3連勝。勝ち点を24に伸ばし首位をキープしました。

2007年5月 7日

首位陥落

2007年Jリーグディビジョン2第13節
ザスパ草津2-1コンサドーレ札幌
得点者:札幌/ダヴィ
     草津/氏原×2

 仙台戦まで終わっているというのに今更ながら草津戦の話題。お詫びといっては何ですが、今日遭遇した小ネタでお茶を濁してみます。

 いつものように昼ご飯を食べに会社近くの洋食屋へ行きました。そこはいつも利用しているところなのですが、初めて見る顔の女性の店員さんがいます。ゴールデンウィークの間に新しいアルバイトが入ったのでしょうか、その人が注文を取りに来ました。うむ、今日はハンバーグでも食べようとハンバーグランチを注文すると、そのお姉さん。

 「ごはんはライスにすることもできますが」

 「はい?」

 聞き間違いかと思って聞き返すと、お姉さんは再び「ごはんはライスにすることもできます。」と自信たっぷりに繰り返します。ほほうごはんをライスに変えられるのね。小錦をKONISHIKIにするようなもんですか。で、オレに何をしろというのか
 まぁもともとライスにするつもりだったので大勢には影響はないのですが、この間違いを指摘してあげたほうがいいのか、それとも大人の心で「ごはん」または「ライス」と、まったく結果の変わらない答えを言うべきなのか、どうしようか考えていると、オノレの発言に微塵も疑いを抱いてないっぽいお姉さんは、どうやらオレを頭のかわいそうな人だと思ったらしく、今度は「ですから、ごはんとライスをお選びいただけます」と言い直してくれました。ですから、ごはんとライスはお選びいただくもんじゃありませんって。つーか、隣のテーブルのサラリーマンコンビこっち見て笑いを堪えてるよ。
 結局、「ごはんとライスをお選びいただけます」と繰り返して最後までオレに決定権を与えてくれなかったお姉さんに負け、「じゃあごはんをお願いします…」と注文しましたが、まさかこんなお笑い小話みたいなことリアルで体験するとは思いませんでした。

 というわけで本題。第1クール最後の試合は、ザスパ草津とのアウェイ戦。この試合で勝点3を獲得すれば、第1クールを首位で終了することができます。これまでのJ2の歴史上、第1クールを首位で終えたチームは高い確率で昇格しています。もちろん、あくまでそれはデータ上の話ですので、第1クール首位チームが昇格絶対確実100%片想いなんてことはあるはずもないわけなんですが、まぁ一応はその時点でもっとも昇格に近いチームであることは間違いなく、つい先日までは「目立ちすぎるから別に首位イラネ」などと言っていたはずのオレも、実際なってみたらなるべくしがみついておきたいなんて図々しくも思ったりしつつも、しかしそれでもやっぱり何となく居心地が悪いような気もして、要するに弱小根性が染みついてしまってるわけで、何がなにやらさっぱりです。

 ということで、この次の試合で眼下の敵・ベガルタ仙台との試合が控えていることを考えると、ここできっちりと勝点3を挙げておくことが重要です。草津とは過去2シーズンを戦い、対戦成績は6勝2分0敗と、今まで一度も負けたことがありません。しかしJ2に参入して最下位、ブービーと来て3年目。これまでのところは3勝4分4敗の9位と取り立てて好成績を挙げているとは言えませんが、仙台や京都サンガにアウェイで引き分けるなど、粘り強い戦い方が今季の特徴のようです。
 そして札幌は、前節出場停止だった西澤画伯が復帰し、おそらくは現時点で三浦監督の考えるベストメンバーが揃いました。草津も決して侮れる相手ではないとはいえ、このメンバーでいつもの通りにやれば…負けることはなかったと思うんですけどね。少なくとも引き分けには持ち込むことができたんじゃないかと思いますが、どちらにしても「いつも通りのこと」ができてなかったのが最大の敗因じゃないかと思います。流れが悪い中でもセットプレイから先制したのは注文通りだったと思いますが、セットプレイから押し込まれた同点ゴールはしかたないにしても、リスタートから一瞬の隙を突かれた逆転ゴールはあれはマズいです。守備型のチームにしてみれば、セットプレイ時に集中を欠くというのは一番やってはいけないことです。やってはいけない度から言えば、「主力がごっそり抜けたチームをド新人監督に任せる」のと、「ドメストとサンポールを混ぜて使う」の間くらいに位置すると思います。キッチリ対応してさえいれば防げた失点だけに、非常にもったいなかったですね。同点に追いつくチャンスもないわけではなかったのですけど、そうでなくても攻撃力の乏しいチームなのに、ビハインドを負っていながら勝っているチームに出足でも負けてセカンドボールを拾えないという状態では、たった1点の壁が相当に厚くなるのも当たり前の話。言うなればでんでん虫のくせに殻がない。人はそれをナメクジと呼ぶというようなものです。全然たとえられてませんけど。試合後芳賀主将を始めとして選手たちが口を揃えて精神面の問題を挙げていたように、これまでは多少ゲームの内容が良くなくとも勝点を取ってきていたことに対する慢心が合ったのかも知れませんし、気持ちは目の前の草津戦ではなく、仙台戦に行っていたのかも知れませんが、いずれにせよ試合後、現地に行っていたゴール裏メイトから送られてきたメールの「いい薬になったでしょ」という感想そのままの試合だったと思います。

 とまぁいろいろ書いてきたところで、実は敗因は別のところにあるかもしれません。連休後半の5月3日、つまりこの試合が行われた日からカミさんの実家(埼玉県)に遊びに行っていたのですが、わずか5分弱で同点に追いつかれたまさにそのくらいの時間帯に、実家に行く途中のBeisiaで買い物してました。ちなみに、そのBeisiaの隣にはカインズホームがあるというあからさまなミラクルザスパワールドなのですけど、そこにコンサドーレサポーターであるオレが紛れ込んでしまったのが良くなかったのかも知れません。でも買ったのはヱビスビールですので許してください。

2007年5月 9日

聖地に神がやってきた

2007年Jリーグディビジョン2第14節
コンサドーレ札幌1-0ベガルタ仙台
得点者:札幌/神
     仙台/なし

 前節ザスパ草津に敗れ、痛い1敗を喫した札幌は、ホームに戻って前節京都サンガに敗れて今季初黒星を喫したベガルタ仙台を迎え撃ちます。この試合は札幌にとって厚別開幕戦。かつて「神話」と呼ばれたほどの不思議な強さを誇ったマクー空間ぶりはだいぶ色あせたとはいえ、JFL時代から多くの勝負が繰り広げられた厚別はやはり特別な場所であり、その特別な場所での開幕戦は、北の大地に遅ればせながらの春の到来を実感できる上でも重要な意味合いを持っています。
 その厚別開幕戦は、第2クール緒戦という節目の試合。先頭集団に食らいついていくためにも連敗は許されませんし、眼下の敵である仙台を叩いておけばその差を広げられるため、余計に重要度が増しています。まぁ草津に負けてなければもう少し気楽に構えることが出来ていたはずなんですが、まぁたらればの話をしてもマ・クベ大佐もブライト艦長もセイラさんももう二度と戻ってこないのです。
 逆に仙台にしてみれば札幌は目の上のたんこぶであり、連敗が許されないのは仙台も同じですから、仙台にとっても重要な意味を持つ試合ですが、チーム状態は万全ではないようで、センターバックの白井が出場停止、中盤の要であるロペスと、サイドバックの菅井も欠場。さらには前回の対戦で同点ゴールを喰らった萬代もベンチスタートと、札幌にとってはイヤな選手がことごとくいません。しかも、ここ厚別は仙台にとって一度も勝ったことがない鬼門です。まぁジンクスは破られるものですから多少の気休め程度にしかなりませんし、逆に仙台スタジアムでは札幌が全然勝ててないのですけどね。
 対する札幌は前節は敗れたことよりも西澤画伯や西谷の動きが精彩を欠いていたことで多少はメンバーをいじってくる可能性も考えられましたが、フタを開けてみれば前節とまったく同じメンバー。敗因をはっきりさせた上で「おまえらもっかい行ってちゃんとやって来い」という三浦監督なりのメッセージなんでしょう。これで燃えなきゃ男じゃありません。翠星石に萌えなきゃヲタクじゃないのと同じです(暴論)。
 その三浦監督はベガルタ仙台の前身であるブランメル仙台でコーチ・監督を務めていたことがあり、キャプテン芳賀は仙台出身、西谷もかつて仙台に所属していました。ソダンの奥様は仙台出身と、割と仙台に縁のある選手も多いですね。そういえば、ダヴィが札幌に来る前にプレイしていたピアウイは「ブラジルの仙台」と呼ばれているとかいないとか(いません)。

 さて、そんな感じでガチンコ勝負になると思われていた試合だったんですが、フタを開けてみればソダンのほぼ一人舞台といった感じでしたね。前半8分、仙台のペナルティエリア近くの右サイドでフリーキックを得ます。西谷の蹴ったボールはソダンの頭をかすめ、仙台の選手にあたりコースが替わりゆっくりとゴールへ。決まったかと思われましたが、シュナイダーが何とか掻きだしゴールならず、万事休すかと思われたその時現れたのは、そう、あの男でした。
 シュナイダーの掻きだしたボールが既にラインを割っていたことに対するアッピールか、それともその前にハンドがあったことに対するアッピールかはわかりませんが、とにかく何事か右手を挙げながら走り込んできたソダンが右足で再び押し込んでゴール。第1クールのアウェイ戦に引き続き、神と呼ばれる男のゴールで札幌が先制しました。
 自らのゴールで気をよくしたか、その後は本来の役割である守備面でも大活躍。競り合いに絶対の強さを持つのはいつものこととしても、カバーリングや1対1でも落ち着いたプレイでピンチを未然に潰す活躍を見せます。もちろん、無失点に抑えることができたのはチーム全員の守備意識の高さがあってこそですし、仙台にロペスがいなかったことで、梁勇基がゴールに近い位置でプレイできる機会が多くなかったこともあるんですけど、それでも危ないところには必ずソダンが顔を出してクリアするシーンが多かったのも事実。これが去年までなら、危ないところに顔を出すというよりはソダンがいるところが危ないという感じでしたけどね。ホントに今年は安定感が増しました。ブルーノとのコンビがよほど合ってるんでしょうかね。とはいえそのブルーノも、カバーリングや読みの部分ではさすがといえるものの、あっさりフェイントに引っかかったり割とスペクタクルも多いんですけどね。ソダンもスペクタクルは決して忘れたわけではないですし、そんなコンビでもJ2ナンバーワンの堅守を支える屋台骨なんですから、サッカーってわからないものですね。

 そんなわけで、「ソダンの前に神はない ソダンの後ろに神は出来る」とも言うべき試合は1-0で札幌が逃げ切って、幸先のいい第2クールスタートを切ることができました。これで試合のなかったアビスパ福岡を抜き2位に浮上。まだまだ厳しい試合は続きますけど、今年のチームは大勝はしない代わりにそう大崩れもしないんじゃないか、そんな予感をさせる試合でした。

2007年5月13日

首位返り咲き

2007年Jリーグディビジョン2第15節
セレッソ大阪0-1コンサドーレ札幌
得点者:札幌/元気
     セレッソ/おりません

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 本日行われたJリーグディビジョン2第15節・セレッソ大阪対コンサドーレ札幌の試合は、後半20分に中山元気が挙げたゴールを守りきった札幌が、今季6試合目のウノゼロ(1-0)の試合でセレッソを下しました。
 詳しい話は試合を見てから書くとしますが、成績不振で都並監督を始め藤川GKコーチや西村GMが揃って解任され、以前セレッソで指揮を執っていた経験があるレビル・クルピ氏の新監督就任と、かつて札幌でプレイしていた「ヒゲカジ」こと梶野智氏のチーム統括部長就任が発表された直後というなんともなタイミングでやってきた試合。多くの主力が流出し、そうでなくてもチーム力の落ちているセレッソだけに、現在の成績不振は決して都並監督だけの責任ではないと思いますけど、それでも何かを変えなければいけないところまで来てはいたんでしょうね。髪を切って違う人みたいになって照れてもらうみたいな感じで、ある意味ショック療法的な意味合いの強い措置だったと思います。
 ただ、よそのチームに口を出すのも無粋なんですけど、これまで途中で監督を交代してなお昇格を果たしたチームはあまり多くないですし、そのチームも「かなり早い時期での交代」かもしくは「後任監督は内部人事」かのいずれかです。以前セレッソで監督をしたことがあるといっても、それももう10年前の話です。いくら名前が連邦の将軍みたいだとしても、よっぽどのことがないと巻き返しは厳しいように思います。

 ただそうは言っても、セレッソの選手たちはまず新監督へのアッピールをしようという気はマンマンでしょうし、吉田照美もやる気マンマンでしょうし、こういう試合はなかなかやりにくいものです。結局クルピ新監督は来日が間に合いませんでしたが、だからといって手を抜くようなことはしないでしょう。アウェイということもあり、まぁ引き分けで充分という気でいたのですけど、実際監督のコメントなどを見る限りでは、大方の予想通り押されて苦しい展開だったようですね。しかしそういう試合でちゃっかり勝ってしまうというのが今季の札幌の不思議さというか不気味さというか、まさしく「星泥棒」の面目躍如というか、気づかぬうちにざっくり斬られている「かまいたちチーム」というか、「かまいたちの夜」は続編なんて作るべきではなかったと思います。

 これで札幌は勝点を30にまで伸ばし、東京ヴェルディ1969と引き分けたモンテディオ山形を抜いて再び首位に返り咲きました。あらまあ。

2007年5月17日

俺達星泥棒

 というわけで毎度のことながら今更のセレッソ戦の感想をば。

 前回書いたとおり、都並監督解任直後の試合。場所は過去何度も国際Aマッチが行われてきた長居スタジアム…の隣にある長居第2陸上競技場。2001年のJ1開幕戦の時、この隣で札幌サンクFCが試合をやってて、長居スタジアムのコンコースから適当なサッポロコールを送ったことを思い出しますが、このスタジアムでコンサドーレが試合を行うのはたぶん初めてのはず。セレッソは前回J2降格した時もここがメイン会場となりましたが、今更ながら5万人収容でワールドカップの会場にもなった日本でも有数のスタジアムである長居スタジアムに比べるとまごう事なきJ2仕様のスタジアムで、「J2に落ちるとはこういうことだ」を地で行ってるような感じです。
 さらにセレッソは前回の対戦時にも書いたとおり、多くの主力を失っており、前線、中盤、守備の要が揃って抜けてしまいました。それがどういうことであるかは、ここをご覧の皆さんにはセンターラインがまるまる抜けた2002年の札幌がどうなったかを思い出してもらえればおわかりかと思いますが、やはり成績は思ったように伸びず4勝3分6敗の9位に低迷しています。
 しかし、主力が流出し若い選手だらけになってしまったとはいえ、その若手選手もデカモシリこと森島康仁や苔口卓也、藤本康太、先日J2最年少ゴールを記録した柿谷曜一朗、香川真司といった世代別の代表候補に名を連ねる選手も多く、選手のレベルは決して低くはありません。まだ古橋達弥やケガで出ていないとはいえ森島寛晃といった頼れるベテランもいますから、別に焦ることもないと思うんですけどねぇ。

 で、この日のスタメンはブラジル人もいない上、フィールドプレイヤーの平均年齢なんと22歳という若いチーム。札幌だったら最下位になるチーム構成ですが、そんなチームに開始から攻められっぱなしの札幌。まぁアウェイでしょぼいのはいつものことなんですが、この日は特に動きが悪く、ラインとラインの間のスペースに簡単にセレッソのぴちぴち攻撃陣に入られ、速いパス回しでゴリゴリ中央を突破される始末。このあたり、以前から言われてきたことではありますが、札幌の守備陣はサイドからのクロスや単純なロングボールには滅法強い反面、中央突破での2列目3列目からの飛び出しには弱く、ボランチより前で食い止められないと割と簡単にアタッキングエリアへの侵入を許してしまうことがけっこうあります。開始早々の絶体絶命の場面は相手のシュートがポスト当たって事なきを得ましたが、その後もセレッソのぴちぴち攻撃陣がめまぐるしくポジションを変えるため捉えきれません。札幌の攻撃は全て単発に終わり、決定的なチャンスもほとんどありません。なすすべなく敗戦した開幕戦の京都サンガ戦を見てるようです。ここでもし失点していたら、おそらく試合結果も京都戦と同じようになっていたかも知れませんが、結果として失点はなく前半は0-0で終了します。

 後半、三浦監督は中盤のテコ入れとして前半消えていることの多かったカウエに替えて大塚を投入。しかしそれでもセレッソペースは変わらず、連続してピンチを招きます。しかしここでもポストが大活躍してピンチを防いでくれました。何年か前、ある女性が銃で胸を撃たれたものの、豊胸手術で入れたシリコンで弾が止まって命拾いをしたというニュースを思い出しましたが、まさにそんな感じ。
 10分を過ぎたあたりからようやく札幌も西谷を中心にチャンスを作り始めます。そして後半20分、左サイドから西嶋が前線にロングボールを送ると、飛び出してきたキーパーよりわずかに先に元気の頭に当たったボールがゆっくりとゴールに吸い込まれ札幌が先制。
 1点でもリードすれば、あとは札幌もいつもの通り焦らずじっくり構えればいいだけ。セレッソの攻撃も次第に雑になってきたため、攻められてはいるもののけっこう余裕を持って守ることが出来るようになってきました。まぁ、セレッソにとってみれば「あれだけいい形を作っていたはずなのにこっちは点が取れず、ほとんどチャンスのなかった札幌がロングパス一本でよくわからんうちに点を取ってなぜか負けてる」のですから、世の理不尽さを嘆いて組み立てが雑になってしまうのも無理もないことですが、そうなれば札幌の思うつぼなわけで。試合巧者…というフレーズをまさか札幌に対して使う日が来るとは思いませんでしたが、仙台の猛攻を凌ぎきった札幌には、単純な攻撃であれば防げないことはありません。その割には危ないシーンもありましたが、守護神高木がことごとくファインセーブで防ぎました。
 結局、ろくすっぽチャンスのなかった札幌が、「星泥棒」の面目躍如で逃げ切り、アウェイで貴重な勝点3をゲットしたわけですが、この辺、危ないシーンでもなぜかゴールにならないというのは2000年のJ2優勝時に似てますね。あの時の守護神だった佐藤洋平は紛れもなく「ネ申」じゃなくて「神」でしたが、それ以外にポストやクロスバーに助けられて無失点に凌いだことも少なくありませんでした。この年の札幌の1試合平均失点はわずかに0.55。これは未だに破られていないJ2記録です。当時は今より試合数は少なかったですけど、延長Vゴールというルールもあった頃。去年鉄壁といわれた横浜FCですら0.67ということを考えると、そのすごさがおわかりになるかと思います。ちなみに今季は14試合を消化して札幌の失点は8。1試合平均失点は0.57と、あの頃に近い数字となっています。そう考えるとどこのチームにも勝てるような気がする反面、今のチームには2000年のエメルソンみたいな化け物はいませんから、どこのチームにも勝てない気もするのですけど、少なくともこの守備力を背景にしてこういう試合を拾っていけば、まだまだ昇格争いに生き残っていけそうですね。

2007年5月22日

二桁勝利一番乗り

2007年Jリーグディビジョン2第16節
コンサドーレ札幌3-0水戸ホーリーホック
得点者:札幌/ダヴィ、カウエ、ソダン
     水戸/なし

 アウェイで難敵・セレッソ大阪を下し連勝で意気上がる札幌は、今節は札幌ドームに戻っての水戸ホーリーホック戦。リアクション型からアクション型への脱皮を図っている最中の水戸ですが、15節終了時点で1勝4分8敗で最下位に沈んでいます。我々もいつか来た道ではありますが、やはり茨の道なんでしょうか、なかなかうまく皮が脱げていないようです。
 しかも水戸はここに来て中村、倉本、平松と守備陣ばかりが相次いで負傷し、さらには前々節(前節水戸は試合なし)の湘南戦でイエローカードをもらった、世が世なら小学生時代は「バク」と呼ばれていたであろうDF大和田が累積警告でこの試合出場停止と。週中に特別指定選手の承認を受けたばかりの加藤広樹をいきなりスタメンで使わざるを得ないほどの緊急事態です。別に「アクションサッカーの第一歩は現役大学生をスタメンで使う」というルールがあるわけではないはずですが。
 そんな相手に、曲がりなりにも首位のホーム札幌はキッチリ勝点3を取る必要があります。特にこの水戸戦のあとは湘南ベルマーレ、アビスパ福岡、京都サンガと難敵が続く上、湘南、福岡とアウェイ戦が続くだけに、この試合は絶対に落とせません。しかしながら、水戸はまだ札幌ドームで負けたことがありません。サンプル数が3試合(2勝1分)と少ないので相性と言うほどのものではないかも知れませんけど、ホベルッチがFK2発叩き込んだけど4点取られたとか、フッキが相手に右ストレートかまして退場とか、とにかく残念な内容しか思い浮かばないのがこのドームでの水戸戦なわけで、まったくもって侮れませんし、先の試合のことばっかり考えてたらどうなるかはザスパ草津戦の敗戦で充分思い知りましたから、油断は禁物、義丹は大鶴なわけです。
 なのでいかに早めに先制点を挙げるか…などと思っていたら、開始わずか1分で左サイドを突破したダヴィが角度のないところから決めていきなり先制点をゲットしました。

 先制点さえ奪ってしまえば、あとはチンタラ攻めつつ隙をうかがい追加点を狙えばいいだけの話。ただ言うのは簡単ですが実際に「チンタラ攻める」というのはなかなか難しいもので、特に早いうちに先制してしまうと欲が出てもっと点を取ろうと攻め急ぎ無理なパスを通そうとして変な奪われ方をしてカウンターを喰らったり、逆に守りの意識が強くなって引きすぎて相手の蹂躙を許してしまったりするものですが、今年の札幌はいやに「大人のチーム」となっています。水戸があまり前線からプレスをかけてこなかったのもありますが、じっくり最終ラインでパスを回して相手の隙をうかがい、リスクを負うことなく急所を突いてチャンスを作り出します。
 しかし、いくら大人サッカーができるようになってきたとはいえ、このチームはコンサドーレ札幌であることを忘れてはいけません。かつては世の中の何が気に入らないのか、リードしてるにも関わらず無闇に攻めていってはカウンター喰らって失点、という中二病サッカーを素で展開していたチームです。今年はさすがにそこまで尾崎じゃなくなりましたけど、前半21分に世が世なら小学生時代は「とき」と呼ばれていたであろうFW塩沢を止めに行ったブルーノが腰を痛めてしまい交代を余儀なくされてしまうアクシデントが発生。さすがはコンサドーレ、リスクを負おうとしなくてもリスクのほうからやってきます。山を跳び谷を越えてやってきます。
 本人も痛いでしょうが、札幌にとってもかなり痛いブルーノの負傷退場。まぁブルーノもよく見てるとけっこうやらかし加減は全盛期の古川先生に匹敵するくらいのスペクタクルなんですけど、どこにいても真っ先にゴールを決めた人に駆け寄るスピードを誇るブルーノが欠けるのはやはり痛いです。で、西澤画伯がセンターバックに入り、空いた右サイドバックには池内が入りました。以前ブルーノがインフルエンザで欠場していた時にもこの組み合わせは経験済みですし、水戸のプレスが緩かったのもあってさしたる破綻も見せませんでしたが、交代枠を1つ使ってしまった以上、後々のことを考えれば早めに追加点を取って試合を決めてしまいたいところです。
 そして前半31分、芳賀の浮き球パスを2人に囲まれながらも元気がキープし、落としたボールをカウエが右足でシュートすると、アウトにかかったボールはキーパーから逃げるようにゴールに突き刺さり待望の2点目をゲットしました。

 さて後半。さすがに水戸も尻に火が付いてきたのか前半よりは積極的に前に出てくるようになったものの、札幌がほぼ主導権を握る展開は変わらず。あと1点を奪えば確実に試合は決まるでしょう。まぁつい最近3点取ったあとに3点取られた守備型チームがあったような気もしますが、後半で3点リードすればそれなりに安全圏と言えるでしょう。つっても、どこのチームが相手でも1-0で勝つのが仕様のチームが2点取っただけでも御の字かも知れませんけどね。とはいえ、得失点差を考えれば取れるうちに取っておきたいところ。以前も書きましたけど、こういう時に攻撃的なポジションならどこでも出来る砂川と、守備力と運動量に優る大塚がベンチに控えているというのは大きな強みです。前任のヤンツーは「スタメンこそが最強であるべき」というポリシーがあったようですが、三浦監督の場合は「ベンチに大駒を残す」という考え方のようです。これは考え方の違いなんでどちらが正解というわけではないのですけど、少なくとも今の札幌は、いわば試合開始の時点で「変身をあと2回残している」とも言えるわけです。その通りに後半19分にU-20の代表合宿から帰ってきたばかりの征也に替えて砂川を、2点目を決めたカウエに替えて大塚を投入します。そうやって変身を済ませたコンサドーレでしたが、無理矢理ドリブルで突破した砂川がペナルティエリア内で倒されたもののPKを取ってもらえなかったり、どフリーのシュートをダヴィが当たり前のようにぶっぱずしたりと追加点が奪えずヤキモキしていたところでダメ押し点を決めたのは、そう、完全体となった「ネ申」ことソダンでした。試合ももう終わろうかという後半38分、セットプレイ崩れからキーパーがはじいたこぼれ球を右足で押し込み3点目をゲット。そのまま逃げ切った札幌が今季9試合目の無失点勝利で10勝目を挙げ、がっちり首位をキープしました。

 …やっぱ落ち着かない。

2007年5月26日

4連勝っていつ以来だろう

2007年Jリーグディビジョン2第17節
湘南ベルマーレ1-2コンサドーレ札幌
得点者:札幌/西谷、ダヴィ
     湘南/アジエル

 前節水戸ホーリーホックを相手に順当に勝点3を挙げたものの、その試合中にブルーノ・クアドロスが腰を痛めて負傷交代するという痛い代償もあった試合から中3日でのアウェイ湘南戦。ブルーノのケガはちょとケガが長引きそうで、当然この試合も欠場なのは仕方がないのですけど、さらに悪いことにブルーノ不在時にソダンとコンビを組んでいた西澤画伯までもが負傷で欠場。池内や西嶋もセンターバックはやれますが、この2人とて今は左右のサイドバックを務めていますので、どっちかをセンターバックにした場合今度はサイドバックがいなくなってしまいます。和波が病気療養中の今、サイドバックの人材が圧倒的に足りないという、猫の手でもエキセントリック少年ボーイの手でも借りたい状況で三浦監督が打った手は、西嶋をセンターバックに回して空いた左サイドバックに今季初スタメンとなる吉瀬を入れることでした。第3節徳島戦で交代出場していますが、先発は今季初めて。徳島戦の出来を見る限りはさほど心配するようなこともありませんが、吉瀬個人の力量というよりは三浦サッカーの要であるディフェンスラインを大きく変更せざるを得なかったことについては一抹の不安は残ります。
 しかし、湘南もまた似たような状況で、こちらはDFの要であるジャーンを始めとして怪我人が多く、本来は中盤の選手である中里をサイドバック起用せざるを得ない状況と、あちらもどうやら似たような感じのようです。その湘南は中2日、札幌は中3日と日程上は1日の余裕がありますが、方や湘南はホームゲーム、しかも前節は日帰り可能な東京での試合で、札幌は飛行機とバスに乗って半日かけての前日入りとなれば、条件的にはほぼ五分と見ていいでしょうか。

 と思ったら、前半はホームの湘南に押されまくりとなります。DFラインは心配されたほどクズされはしないものの、アジエルの個人突破をカウエが止められず、ラインは下がりっぱなしで押し上げもままならないので、セカンドボールもほとんど抑えられてしまいます。前半17分、左サイドからのフリーキックを直接アジエルに決められ、痛い先制点を献上してしまいました。
 反撃したい札幌ですが、2トップは孤立し普段はそれなりに安定している元気のポストもあまり機能しません。サイドに活路を見いだそうにも、右の征也がさっぱりでそれもままならず。まぁ、なんのかのといってもまだ2年目の選手。シーズン最初からスタメンで試合に出ずっぱりで、その上代表合宿との往復で疲労は溜まっているでしょうし、それでトゥーロンユースのメンバーに選ばれてちょっと気が抜けたのかも知れません。いずれにしても消えっぱなしの上池内とのコンビも合わず、攻撃面での合わなさっぷりは左サイドの西谷と吉瀬も似たようなもの。まるっきり反撃の糸口すら掴めず前半は1点ビハインドのまま終了。

 流れを変えたい後半、三浦監督は砂川と謙伍を頭から投入という大胆な交代策を採ってきました。まぁ砂川・大塚投入はいつものことですし、征也と元気の動きが悪かったのは素人目にも明らかでしたので、あと残りの1つはアクシデントでもない限り元気→謙伍となることは容易に予想できることでしたが、まさか後半頭から、しかも2枚同時に替えるとは思っていませんでしたねぇ。
 で、その交代策がずばりと当たるもんだからこの監督は侮れません。後半11分、アタッキングエリアで砂川がプレッシャーをかけてこぼれたボールをダヴィが拾い、そのままペナルティエリアまで単独突破。右足で浮かせたシュートはキーパーに阻まれ、そのボールに謙伍が飛び込んで頭で合わせましたが、シュートは去年の横浜FC戦のアレを彷彿させる弾道で枠の外へ。もうかなりのガッカリ感で、今後しばらく石井謙伍を「ミートボール」という安易なあだ名で呼んでやろうと思い始めていたのですが、なぜか湘南の選手は早川主審に抗議をしているし、相手との接触で痛んでいた謙伍がカウエに「よくやった」みたいに言われています。え? 何? PKなの? ウソ?
 現地では全くわからなかったのでハンドでもあったのかと思ったんですが、ブデオを見直すと湘南の中里がボールに関係なく謙伍の邪魔をしたということみたいですね。でも中里が邪魔しなくても入ってなかったんじゃねぇかと思ってしまう謙伍には厳しいオレ。なんだかよくわからないけどとにかく得たチャンスを、西谷が冷静に決めて同点に追いつきました。

 同点に追いついた札幌はこれでにわかに活気づき、やりたい放題の砂川を中心に攻めます。湘南はもうこの時点で動きも落ちてきてミスも目立ち始め、勢いの差が明らかになってきました。こうなってくるとあとは札幌の変身第三段階、つまりどの時点で大塚を投入するか、そして誰と交代させるかです。残り時間はまだ30分以上あり、勝負をかけるにはまだ少し時間が早いですし、アクシデントが発生した場合を考慮するとこの段階で交代枠を使い切ってしまうのはあまりにもリスキーです。
 そして交代相手についても、これまでのパターンからもカウエとの交代が一番常識的ですが、守備はともかく攻撃面では西谷との連携があまり合ってなかった吉瀬もありといえばあり。とはいえ、吉瀬を外したら誰がサイドバックをするのかという問題があります。西嶋を左に出して池内をセンターバックに入れ、芳賀を右のサイドバックにするという方法がありますが、そうなるとけっこう大手術になってしまいます。現状を考えればこのまま1-1で終わったとしてもさほど痛くはないですから、バランスを崩してまで三浦監督がそこまでいじるとは考えにくい…と思っていたら、吉瀬を下げてカウエを左サイドバックに下げるという布陣。これは予想はしていませんでしたが、それがまた思いの外フィットするのがこの監督の恐ろしいところ。この頃には西谷はだいぶバテていましたけど、砂川の突破に手を焼いていた湘南が右サイドをケアするのに空いた左サイドを好きなように使い攻撃に流れが出てきます。逆転も時間の問題と思われた後半35分、いつものように中盤で身体を張り続ける芳賀が自陣でふんだくったボールを西谷がそのままダヴィに繋ぎ、ダヴィは右サイドを駆け上がる砂川にスルーパス。そのままドリブルで駆け上がり上げたクロスに、やはり同じようにパスを出したあと駆け上がってきたダヴィが頭で合わせ、ついに札幌が逆転に成功しました。
 その後、あとのなくなった湘南が意地を見せ札幌陣内に攻め込みますが、その湘南の猛攻に対して身体を張って守る札幌は最後までゴールを許さず、アウェイで貴重な勝ち点3をゲットしました。

 4連勝となり着実に首位固めを行ったわけですが、得点を決めてサポーターの陣取るスタンドに向けて駆けだしたダヴィがブルーノに捕捉されなかったことにブルーノ不在を痛感した水曜日の試合でした。

2007年5月30日

もぎとった

2007年Jリーグディビジョン2第18節
アビスパ福岡1-2コンサドーレ札幌
得点者:札幌/西谷、謙伍
     福岡/リンコン

 「強いものが勝つんじゃない、勝ったものが強いんだ」と言ったのは、かつて「皇帝」と呼ばれた西ドイツ(当時)代表キャプテン、フランツ・ベッケンバウアーでした。ロッテンマイヤーさんではありません。意味は言葉通りですが、個々の力量は決して高くないし、層が厚いわけでもない、そんなチームが第17節までで11もの勝ち星を挙げて首位を守っているのですから、上の理論で言えばコンサドーレ札幌というチームは「勝ってるんだから強いんだ」となるでしょう。しかし、そうは言ってもやはり「強い」というのは退かぬ、媚びぬ、省みぬ人みたいなのを言うのであって、首位といえども半信半疑、というのが多くのサポーターの率直な印象だと思います。
 しかし、前節から中3日でのアウェイ連戦、北海道から遠く離れた九州まで遠征し、30度近い気温の中での真昼の試合、そのまま言葉通りスペクタクルなディフェンスで堅守を支えるブルーノが負傷離脱する中、そのブルーノとのコンビでファンタジックなディフェンスを見せている唯一神ソダンが、遠征には加わっていたはずなのに当日になっていきなり欠場。どうやら風邪による発熱だそうで、つまりは神風邪で神隠しということですが、とにかくこれでもかと言わんばかりの逆境の中、3連敗中の福岡を相手に前半で先制を許す展開。以前の札幌であればなんの疑いもなく連敗ストッパーの実力を遺憾なく発揮していたことでしょう。加えて言うなら、決勝ゴールはこの試合がJリーグデビュー戦となったハファエルに決められてというのが札幌の役目だったはず。それが後半に追いついてさらにアディショナルタイムで見事にうっちゃってしまったのですから、これはもう素直に「強い」と言ってもいいのではないでしょうか。こういう勝ち方をしてしまうと、思わず「あの言葉」を言ってしまいそうになりますが、三浦監督が禁句にしていますんでとりあえずこれで。わっかるかなぁ~、わかんねぇだろうなぁ~。

 しかし試合は本当に厳しいものでした。DFラインは西澤画伯が戻ってきたのでソダンに変わって西嶋とセンターバックを組み、右サイドバックは池内、そして左サイドバックは前節割と良かったカウエが入り、ボランチに大塚という布陣だったのですが、10度以上もの気温差のある北海道からやってきた選手たちがいきなり30度もの環境に放り込まれて無事でいられるはずもなく、そのためか前半は湘南戦以上に動きが悪く、リンコンを中心に小刻みにパスを繋ぐ福岡に好きなようにやられる展開となります。前半15分には中盤のマークミスを突かれ、うまく札幌守備陣のギャップに入り込んだリンコンが、ボールを受けて素早く反転して放ったシュートがゴール右に決まり、先制を許してしまいました。だいたい上背のある選手は総じて足もとは巧いほうではない、というのがうちのダヴィを例に出すまでもなく一般的に言われていることですが、このリンコン、185cmという長身ながら足もとの技術があり、シュートもうまい好選手です。まぁそれでも試合を見ている間、リンコンがボールを持つと「リンコンリンコンゆかいなリンコン楽しいリンコン♪」というフレーズが頭の中をグルグル回ってしまうほうが困っていたんですけど。
 その後も試合は福岡ペース。とりあえず湘南戦がそうだったように、これから夏場を迎えるにあたり、アウェイでの試合は前半抑え気味に、という目論見があるにせよ、それにしてもちょっと心配になるくらいの出来で、前半の見せ場はフライングボディアタックを噛ました芳賀主将が一悶着を起こした(注:逆ギレ)シーンくらいでしたが、それでも何とか1失点に抑えました。
 結果論ではありますが、ここで1失点で終えることが出来たことが逆転勝利に結びついたと言えるでしょう。もちろん無失点に終えられるのであればそれに越したことはなかったのでしょうけど、たらればの話をするならば、もし0-0で終わっていた場合は、三浦監督が砂川を後半頭から出してはこなかったと思うのです。実際、前節同じように後半開始から2枚替えてきたことについて「0-0だったらできなかった」と監督自身が言っていましたし。こういう「勝負をかける」のタイミングというのは意外と難しいもので、早ければいいってもんでもありませんが、だからといってあとにとっておいたらそのタイミングを逃してしまったというのはよくある話。昔好きなおかずをあとで食べようととっておいたら横からかっさらわれたということがありましたけど、それと同じではないけど似ています。
 で、この試合でも前節同様ビハインドと言うことで、同じように後半の頭から砂川を投入してきた三浦監督。今回は1枚だけでしたが、それがトップギヤに入れる合図となりました。始まって早々の後半2分、砂川からのパスをペナルティエリア近くで受けた大塚がエリア内に侵入しシュート。このボールは相手DFに当たってしまいますが、こぼれたところを詰めていた西谷が落ち着いて蹴り込んで同点としました。ここで特筆すべきは、「流れの中で中盤の選手がFWを追い越して得点した」ことでしょうか。なんだかんだ言って攻撃のパターンも着実に増えてきているんですね。
 この時点で既に足の止まっていた福岡に、元気な砂川を捕まえられるはずもなく、試合はほぼ札幌ペースで進みます。まぁチャンスはあれどもなかなか決められないのも札幌でして、いくつかあったチャンスを逃し続けてスコアは1-1のまま時間が過ぎていきます。まぁ札幌は前節湘南戦での勝点3が効いていますから、このまま終わっても上出来レベル。ところが、ご存じの通り実際のところはアディショナルタイムに交代出場の石井謙伍が砂川からのクロスをニアで落ち着いて蹴り込み、貴重な勝点3をもぎ取る値千金のゴールで逆転しました。

 結果だけを見れば、「これ以上連敗できない福岡が攻めに出てきたところに札幌がカウンターを仕掛け、足が止まっていた福岡の守備陣が戻りきれず謙伍がゴールを決めた」という感じになると思います。しかし劇的なゴールで見落としがちですが、ここでも実は「三浦サッカーの変化」が見えてきます。このゴールまでの一連のプレイの起点となったのは、その直前に福岡DF川嶋のミドルシュートをキャッチした高木のフィードからでした。ここまで書いてきたような様々な不利の中、試合時間は残りわずか。このような状況で、もし本当に選手が「引き分けでいい」と考えていたのであれば、高木はGKがボールを保持できる6秒ギリギリまで粘り、なるべく高いパントキックで時間と距離を稼ぐプレイを選択したはず。確かに福岡が前がかりになってカウンターを狙いやすい状況だったとはいえ、逆に言えばそれは札幌陣内に福岡選手が多く残っているということであり、そこでボールを奪われればあっという間に大ピンチを招きかねません。三浦サッカーが巷で言われている通りの「リスク回避最優先型」だったとしたら、そういったプレイの選択はまずあり得なかったと思うのです。少なくとも、アウェイチームのセオリーではありません。
 にもかかわらず、高木はボールをキャッチしてすぐにすぐ近くにいたカウエに繋ぎました。ボールを受けたカウエにはタッチライン際でキープをする選択肢もあったはずですが、そのようなそぶりは全く見せずすぐさま砂川にパスしそのまま前線にダッシュ。砂川はヒールでカウエに戻し、カウエは再び砂川の走る前方のスペースへダイレクトパス、そのボールに追いついた砂川が入れたアーリークロスを謙伍が決めたわけですが、この時謙伍を含めてダヴィ、西谷と3人もの選手がゴール前に詰めていました。つまり、このゴールはリスクを怖れず最後まで勝ちに行った結果必然的に生まれたゴールと言えるのではないでしょうか。三浦サッカーは選手と共に変化していってます。もう星泥棒じゃなくて星強盗になったかもしれません。

 ところで、試合後に「第1クールなら自分たちが勝っていた」と言っていた福岡の監督は「勝ったものが強いんだ」と言っていた人が監督だった1990年のワールドカップイタリア大会のメンバーでしたっけ。

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